商社でエネルギー部門に40年以上携わってきた著者が、石油やシェールガスなどのエネルギーに関する基本的な事を解説している一冊。シェール革命の起源から、増え続ける埋蔵量の仕組み、日本のエネルギー問題などを紹介しています。
■増え続けるLNGの輸入
2010年まで日本の貿易収支は黒字だったが、2013年には約11.5兆円の赤字になった。東日本大震災以降、発電用燃料の約30%を占めていた原子力が使えない事になり、電力会社は代替燃料の大半をLNGスポットカーゴを臨時に買ってまかなわざるをえなくなった。このLNGスポット輸入が貿易赤字の主因だという。
LNGとは、消費市場から遠く離れたところで生産される天然ガスを商業化するために、液化した天然ガスである。常温では気体の天然ガスをマイナス162度で液化して体積を約1/600にし、専用タンカーで運ぶ。
日本のLNGの輸入量は増えているだけでなく、価格が他の国が買っているものより高いと話題になっている。LNGは通常20年間ほどの長期契約で購入している。だが、今回のように臨時で追加のガスが必要な時は、スポット契約といって、長期の契約に基づかない、その時だけの当座の取引で買わざるをえない。スポット契約の場合、価格を含め諸条件は、その時の需給状況によって決まる。
■増え続ける埋蔵量
「資源量」とは、地中に存在するすべての炭化水素量の事で、不確実性の高い順に「未発見資源量」「推定資源量」「原始資源量」と呼ぶ。EIAが発表しているものは、「原始資源量」の内「技術的に回収可能な資源量」である。これがどの程度、経済性を持って実際に生産できるかは現時点ではわからない。
一方、「埋蔵量」とは、この「技術的に回収可能な資源量」の内、通常の方法で経済的な採掘が可能なものを言い、回収可能性の度合いに応じて「確認埋蔵量」「推定埋蔵量」「予想埋蔵量」という。一般的には90%以上の回収可能性がある場合を「確認埋蔵量」、50%以上の場合を「推定埋蔵量」、10%以上の場合を「予想埋蔵量」と呼ぶ。通常、「埋蔵量」と言う時、それは「確認埋蔵量」を指し、ほぼ全量を経済性をもって生産する事が可能である。
現存埋蔵量を生産量で除した数値を「R/P Ratio(可採年数)」という。今ではその数値が50年強になっている。シェールガス、シェールオイルのように、経済的に生産する事が困難だったものが、価格の上昇と技術革新によって、経済的に生産されるようになっている。これは間違いなく「埋蔵量」の増加につながっている。当時は、経済性がないと判断して開発に移行しなかったガス田を、価格水準が上がった昨今、最新の技術を利用して開発・生産しているところも多い。
また、二次回収、三次回収などにより回収率が向上し、当初の確認埋蔵量以上の生産を実現しているケースも多い。例えば回収率が20%から40%に改善されると、埋蔵量は2倍になる。埋蔵量は過去の歴史を見ても、技術の進歩と価格の高騰によって徐々に「成長」しているように見えるのだ。
著者 岩瀬 昇
1948年生まれ。エネルギーアナリスト 1971年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、2010年常務執行役員、2012年顧問。三井物産入社以来、香港、台北、2度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。 2014年に三井石油開発退職後は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」代表世話人として、後進の育成、講演・執筆活動を続けている。
帯 HONZ代表 成毛 眞 |
エコノミスト 2014年 12/16号 [雑誌] 作家 板谷 敏彦 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.9 | 5分 | |
第1章 日本の輸入ガスはなぜ高いか? | p.19 | 15分 | |
第2章 進化するシェール革命 | p.47 | 22分 | |
第3章 「埋蔵量」のナゾ | p.87 | 24分 | |
第4章 戦略物資から商品へ | p.131 | 32分 | |
第5章 もう一度エネルギー問題を考える | p.191 | 18分 | |
第6章 日本のエネルギー政策 | p.225 | 11分 | |
あとがき | p.246 | 2分 |
頁岩(シェール)層から採取される天然ガス 従来のガス田ではない場所から生産されることから、非在…
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