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2014/12/09更新

現場論: 「非凡な現場」をつくる論理と実践

  • 遠藤 功
  • 発刊:2014年10月
  • 総ページ数:353P

286分

7P

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現場力とは何か

現場力という組織能力は次の3つの異なる能力による「重層構造」になっている。

①保つ能力
決められた業務を確実に遂行し、決められた価値を安定的に生み出す能力。当たり前の事を当たり前に行うという「凡事徹底」は現場にとって基本中の基本である。「当たり前」とは「標準」と定義される。仕事のやり方や手順を定める「標準作業」、目標を定める「標準コスト」、目標納期を定める「標準納期」など、業務遂行に必要な「標準」を明確に定めて明文化し、周知徹底させ、確実に実現できる能力を磨く事が大切である。

生産性の低い現場には「しか」が多い。「私しかできない」「彼にしか任せられない」など、仕事が属人化し、放置されたままになっている。一方、生産性の高い現場では「でも」が多い。「誰でもできる」「新人でもこなせる」など、標準化が確立され、誰にとっても「当たり前」になっている。

②よりよくする能力
現場力を競争上の優位性にまで高めるためには、現状を維持するのではなく、「よりよくする能力」を磨き込む必要がある。「よりよくする」とは、日々「改善」するという事である。この改善能力こそ、現場力という組織能力の中核にほかならない。「改善」によって生まれる差異は、1つずつを見れば「微差」である。しかし、競争という視点で見れば、「微差」は決定的な差になりえる。

トヨタでは「改善マラソン」という言葉をよく聞く。改善とは「一度だけやっておしまい」というものではなく、「いつまでも続く」事こそが本質である。その継続性にこそ差別性がある。

③新しいものを生み出す能力
非凡な現場は、日々の業務を遂行しながら、全く新しい価値を生み出す革新的な取り組みも行っている。現場の「気づき」は新商品や新サービスだけに留まらず、全く新しい発想やコンセプトを生むこともありうる。

3つの能力のどれがその現場の「コア能力」になっているかによって、現場力のレベルは大きく異なってくる。「保つ」がコア能力である現場では、「よりよくする」「新しいものを生み出す」事は期待できない。肝心なのは3つの能力の「どれがコアとなっているか」だ。多くの企業の現場は「保つ」がコア能力であり、そこに留まってしまっている。

現場力は重層的に連なっており、「保つ能力」が確立しなければ、「よりよくする能力」を積み上げる事ができない。同様に「よりよくする能力」があってこそ「新しいものを生み出す能力」を積み上げる事ができる。現場力という組織能力の企業間格差が大きい理由がここにある。

組織能力は一気に高まる事はないが、着実な鍛錬を積み重ねていけば、能力を高め、現場力を進化させる事は十分に可能である。