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2014/12/10更新

億男

186分

9P

  • 古典的
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  • 学術系
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三億円が消える

一男の娘、まどか。娘の9歳の誕生日に一男は、高級フレンチでランチをする事にした。一男が一日昼も夜も働いて、この一食、一時間のためにお金を払う。親の事情で娘に寂しい思いをさせている。一男はいたたまれない気持ちになった。お金さえあれば、こんな事にならなかったのに。

レストランを出て、一男はまどかと並んで歩く。駅に併設されたショッピングビルの中では福引きをやっていて、豪華賞品と書かれたボードが啓示されている。まどかが、足を止める。視線の先には三等の自転車があった。福引き会場の前で動かない一男たちを見かねてなのか、老婦人が福引き券を差し出してきた。礼を言いながら、福引き券を受け取り、くじをひいた。4等、宝くじ10枚。

10日後、宝くじが当選していた。3億円。「お金は鋳造された自由である」かつてドストエフスキーは言った。お金で幸せを買う事はできないかもしれない。だが少なくとも、自由を手に入れる事はできる。好きな事をする自由。一男はパソコンを立ち上げ、検索窓に「大金 使い道」と入力し、その中の1つに目を留める。億男たちの金言。その掲示板の最後の言葉に目を留めた。

「人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ」チャーリー・チャップリン

一男はこの言葉を教えてくれた親友を思い出した。お金と幸せの答えを相談できるのは15年以来会っていないが、親友の九十九しかいない。15年ぶりに会う九十九は、ベンチャー企業を立ち上げ大金持ちになり、タワービルの高層階に住んでいた。

九十九から三億円を現金にして、実際に触れてみる事を薦められ、一男は三億円の入った旅行かばんを持って、九十九に会いにいった。タワービルの高層階で、高い寿司を食べ、酒を飲み、美女に囲まれ、福沢諭吉の絨毯の上で大騒ぎした。その翌日、九十九がいなくなっていた。三億円と共に。

生きるために必要なもの

一男は九十九の事をパソコンで調べた。九十九が、作った会社を大手の通信会社に売却したこと。その売却益を会社設立時からのメンバー3人と分け合ったこと。

一男は九十九の居場所を求めて、3人を探す。そして、十和子、百瀬、千住と「億万長者のその後の人生」を目の当りにする。しかし、九十九への手がかりは途絶え、三億円も、「お金と幸せの答え」も見つからない。

3年ぶりの娘のバレエの発表会。そこで、一男は再会した妻に言った。「僕が欲しいものは何もない。ただ借金を返し、家族が戻ってきて、君達が欲しいものが全部買えればそれでいいんだ」

そこで妻は言った。「あなたがお金によって、欲という大切なものを奪われた」と。人は明日を生きるために何かを欲する。どんなに大金を手に入れたとしても、元に戻る事はできないのだと。