指揮者の佐渡裕氏が、指揮者という仕事について語っている一冊。指揮者がどのように楽譜と向き合い、作曲家の意図した音楽をつくり上げるのか。どのように自分の音をつくりあげるのかが書かれています。
■指揮者の役割
指揮者はオーケストラの中で唯一、音を鳴らさない音楽家だ。そんな指揮者の指揮に応えて、奏者が弓を動かしたり、息を送ったり、ものを叩いたり、声を出したりする。それによって空気が振動して、人の鼓膜を震わせ、人の心を揺るがせる。感動が生まれる。
指揮者の仕事のほとんどは、指揮台に立つ以前にある。まずリハーサルでは指揮者が自分のイメージする音楽をオーケストラに伝える。その時、共通言語になるのが楽譜だ。
指揮者の第一の役割とは、譜面と向き合って、そこに作曲家が残した「暗号」を読み解いて、作曲家が意図した音のイメージに近づく事である。作曲家の気付いていなかった新しい音の効果や聴き手の受け止め方を求めて、指揮者は譜面に向かう。一度の指揮で見つけられなくても、回を重ねるたびに新しい発見が得られる事がある。大事な出会いを得たり、大切な人を失ったり、歳を重ねて経験を積み、心の引き出しが増えた時、遠くにあった音楽が、ふっと猫のようにそばに寄ってきてくれる事もある。
指揮者は「作曲家が楽譜に込めた意図を読み取る」とか「オーケストラをまとめあげる」などと漠然と言われるが、現実的にはむちゃくちゃ人間臭い事をやっている。
オーケストラのメンバーやスタッフと感情的にぶつかる事もあれば、涙を流して喜びを分かち合う事もある。
著者 佐渡 裕
1961年生まれ。指揮者 故レナード・バーンスタイン、小澤征爾らに師事。1989年ブザンソン指揮者コンクール優勝。1995年第一回レナード・バーンスタイン・エルサレム国際指揮者コンクール優勝。パリ管弦楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、ケルンWDR交響楽団、バイエルン国立歌劇場管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、北ドイツ放送交響楽団等一流オーケストラを毎年多数指揮している。 2015年9月よりオーストリアを代表する、107年の歴史を持つトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督に就任。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 3分 | |
第一章 楽譜という宇宙 | p.17 | 23分 | |
第二章 指揮者の時間 | p.59 | 24分 | |
第三章 オーケストラの輝き | p.103 | 16分 | |
第四章 「第九」の風景 | p.133 | 19分 | |
第五章 音楽という贈り物 | p.169 | 24分 | |
終 章 新たな挑戦 | p.213 | 11分 |