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2014/10/13更新

競争の科学——賢く戦い、結果を出す

340分

3P

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うまく競争するためには何が必要か

成功するにはうまく競争しなければならない。競争という行動を人間の心理的、生物学的な点から解説している本です。いかにうまく競争するかという科学的知見が書かれています。


■練習だけでは成功しない
近年、あらゆる活動における成功の秘訣は、意図的かつ努力を要する訓練を10年程度にわたって積み重ねる事だという主張がなされてきた。訓練こそが熟達に至る道であり、地道に練習を続ける事で成功のチャンスを高められるのだと。だが、成功するためには、ここぞという場面で能力を発揮できなければならない。練習と競争は別物だ。どれだけ経験を積んだところで、競争のストレスを消す事はできない。勝者になるのは、より多く練習した人ではなく、よりうまく競争した人だ。

競争能力は、生得的要素と後天的要素の所産だ。一般的に生物学的要因は決定的・恒久的なものだと考えられている。しかし、現実はそれほど単純ではない。生理的要因と心理的要因は主導権を奪い合っている。よく言われる「一流と平凡な競争者の違いは精神的なものである」という言葉は本質を突いている。優れた競争者は、心理的状態をコントロールする事で、その基礎となる生理的状態を変える事ができる。

超短要約

人間の脳が、実際に起きていない事や、おそらく実現しないであろう事を考えるのにかなりの時間を費やしている事には、多くの人が気付いているはずだ。だが脳はそれを「実際の出来事とほぼ同じもの」として認識するために、現実の出来事に対してと同じように、これらに熱心に思いを巡らせるようになる。

イリノイ大学の研究によれば、人間は平均して1日の思考全体の3%を、このような現実もどきの架空のシナリオについて考える事に捧げている。また人は1日の思考の6%を過去や未来との現在の比較に費やしている。過去の失敗や判断ミスを思い出したり、また同じような失敗をしてしまわないかと考える事に、大きな精神的エネルギーを費やしているのだ。また、すべてがうまくいったらどうなるだろうかという夢想に没頭する事もある。

さらに人間は全思考の3%を他者を基準にした否定/肯定的な自己評価に費やしている。すべて合わせると、人間の思考の12%はこうした比較による自己評価に捧げられている。

この割合は、困難が予測される競争の前や、困難な競争の後などに急増する。一般的にこうした絶えざる自己比較は、不安を生じさせるものであるため、止めるべきだと考えられている。不安はミスにつながるからだ。

ところが事実はそうではなく、多くの研究で、認知的不安とパフォーマンスがともに高いケースが見られた。また、身体的不安による極めて高レベルの生理的覚醒が生じた場合にパフォーマンスが低下するという理論も、それを証明するデータが実験や観察によって得られない事が多かった。

人にはそれぞれパフォーマンスに効果的な不安レベルがある。不安が多い時に最高のパフォーマンスをする選手もいれば、その逆の選手もいる。最適なパフォーマンスに必要な不安レベルが、その人の日常生活の基準値を極端に上回る事は少ない。日頃からリラックスしている人は、不安レベルがそれほど高くない時に最善の能力を発揮しやすい。日頃から神経質で気を張っている人は、覚醒レベルが高いほどパフォーマンスを発揮しやすい。

アマチュアとプロの真の違いは、不安をどう解釈するかだ。アマチュアは不安を有害なものととらえ、プロは有益なものととらえる傾向がある。プロは、自分が不安を感じていると自覚している。だがそれでもまだ、「状況をコントロールできる」と信じている。

大切なのは必ずしも競争者をなだめてリラックスさせる事ではない。それよりも競争者を最適なゾーンへと導く事なのだ。

著者 アシュリー・メリーマン

ジャーナリスト、弁護士 ワシントンポスト紙、ニューズウィーク誌、タイム誌などに寄稿。 ポー・ブロンソンとの共著『NurtureShock』で、PENセンター・アメリカ図書館賞ジャーナリズム部門、アメリカ科学振興協会(AAAS)科学ジャーナリスト賞などを受賞。 弁護士としてビル・クリントン政権で働いた経験をもつ。

著者 ポー・ブロンソン

ジャーナリスト、作家 ニューヨークタイムズ紙、ウォールストリートジャーナル紙、ワイアード誌などに寄稿。 ニューヨーク・タイムズベストセラーとなったアシュリー・メリーマンとの共著『NurtureShock』(邦訳『間違いだらけの子育て』)で、PENセンター・アメリカ図書館賞ジャーナリズム部門、アメリカ科学振興協会(AAAS)科学ジャーナリスト賞などを受賞。

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土井 英司
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筑波大学教授 渡辺 政隆

章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
第1章 唾液は語る p.12 20分
第2章 競争相手との関係 p.38 20分
第3章 環境的要因 p.65 20分
第4章 遺伝子の酵素 p.94 23分
第5章 男女の違い p.124 23分
第6章 幼少期の環境 p.155 23分
第7章 獲得型と防御型 p.186 21分
第8章 ポジティブとネガティブ p.214 26分
第9章 競争のホルモン p.248 20分
第10章 チームのヒエラルキー p.276 15分
第11章 競争とイノベーション p.296 26分
第12章 公正なる競争 p.330 11分

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