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業界の常識をアップデートせよ

そもそも、お豆腐業界は、あまり大きなメーカーが出現しにくい業界だった。値段の割に重く壊れやすいので、運送費が高くつき、遠くへ持って行くほどに不利になるからである。さらには、新鮮さが求められるので、やはり遠くへ持って行くほど不利になる。

そんな条件もあって全国各地に、スーパーに売る程度に大きなメーカー、売上数億円から数十億円の企業が林立していた。中には、事業規模を拡大しようとした企業もあり、機械化のブームに乗って様々な工程を自動化し、小売店で売る価格のお豆腐を大量生産した。

しかし、この「中堅」が一番苦しい。中堅メーカーは生産を機械化したとはいえ、すべてが全自動という訳にはいかない。大豆を水に浸し、すって豆乳を絞って、にがりを入れて、お豆腐をよせる、というところまでは機械化が可能である。ここで生産された大きなお豆腐を切る作業も自動化できる。しかし、お豆腐は柔らかいため、水にさらしてパックに詰める作業は、今も大抵人の手で行われている。

お豆腐の生産現場は、かなり非効率なラインでつくっていた。昭和の時代は、まだ利益が上がっていたが、バブル崩壊の長い不況で、お豆腐メーカーの中には安売りにしか活路を見出せない企業が出てきて、無理な安売り競争を繰り広げる事になった。その結果、消費者に「お豆腐は安いもの」という認識が生まれ、業界は疲弊していった。そこに機械の更新時期がやってきた。新しい機械を入れるには莫大な費用がかかる。地方には廃業する中規模のお豆腐屋さんがあとを絶たなくなった。

この業界にも、今まで様々な大資本が参入している。大きなマーケットがあるためである。しかし、ことごとく数年で撤退している。「日配品」だからこその難しさがそこにはある。

まずはお豆腐は消費期限が短く、在庫が持てない。だから「返品」も存在しない。売れ残れば「廃棄」となる。ところが、お豆腐は日本の食卓に欠かせないため、小売店にとって「お豆腐は品切れ」などという事はあってはならない。だから、小売店は期限ぎりぎりまで数量を見切ろうとする。そのため、メーカーには即応が求められる。しかも発注量には大きな波がある。

変わったお豆腐やこだわりのお豆腐を出しても、結局はSKU(ストック・キーピング・ユニット≒品数)が増えるだけで、在庫や在庫管理に必要な人員が増えて、企業にとって不利になっていく。一時的に商品が人気になったとしても、それだけで会社は成り立たない。

だったら「木綿」と「絹」という2つの商品を、もっと短時間で機動的に作れるよう、社運を賭けてでも極めるべきではないか。そこで、徹底して資金を注ぎ込み、手作業のパック入れ作業を全自動化できないか考えた。こうして、年商以上の設備投資を行い、6年間で売上4倍という、驚異的な成長を遂げた。