行き過ぎた資本主義というものを、身近な路地裏経済から見直し、その本質を考えるコラム。貧富の差の拡大と乱開発を招く資本主義は、本当に良いシステムなのかを問う内容です。
■生活の豊かさと商品の豊かさは同義か
現代ほど、お金の万能性信仰が高まった時代は、かつてはなかったのではないか。資本主義の発展段階で、つまり産業革命を経て、生産能力が大幅に増大し、その延長線上にある私達の世界には商品が溢れるようになった。私達の生活の豊かさとは、ほとんど私達が手にする事のできる商品の豊かさと同義語になってきている。
現代を特徴付けている消費資本主義がつくり出す社会とは、身の回りのすべてのものがお金と交換可能であるような社会であると言ってもいいかもしれない。それゆえに、このすべてのものと交換可能なお金という商品の万能性が信仰の対象になっている。
今のところ資本主義は地球上で最も広範な地域で機能している社会・経済システムであり、これから先もしばらくは支配的なシステムであり続ける事は確かだろう。しかし、広範に採用されているシステムが、最も素晴らしいシステムなのだと断定するのは早とちりである。
ソビエト連邦が崩壊した時に、社会主義はだめだ、資本主義こそが理想的な社会・経済システムである事が証明されたという経済学者や政治家がいたが、ソ連の崩壊以後の資本主義は次第に弱肉強食のダーウィニズムに似てきており、金融資本主義はリーマン・ショックのような詐欺まがいの事件まで引き起こした。一方で、人々の生活は楽になったとはいえず、貧富の格差は拡大し、地域環境をおびやかす乱開発が懲りもせずに続けられている。
私達は、それがどんなに多くの欠点を持っていたとしても、今のところ資本主義に代わりうる新しい経済システムを発見できていないが、将来のどこかで、人間は資本主義的な生産方式、市場原理主義、自由主義経済といったものとは、原理の異なる社会システムをつくり上げる必要に迫られる。
著者 平川克美
1950年生まれ。株式会社リナックスカフェ代表取締役 渋谷道玄坂に翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを内田樹らと共に設立、代表取締役となる。現在、株式会社リナックスカフェ代表取締役。株式会社ラジオカフェ代表取締役。立教大学特任教授。
帯 コラムニスト 小田嶋 隆 |
THE 21 (ザ ニジュウイチ) 2014年 11月号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 2分 | |
第1章 資本主義のまぼろし | p.13 | 21分 | |
第2章 路地裏の資本主義 | p.49 | 57分 | |
第3章 国民国家の終わりと、株式会社の終わり | p.149 | 22分 | |
第4章 “猫町”から見た資本主義 | p.187 | 11分 | |
第5章 銭湯は日本経済を癒せるのか | p.207 | 10分 | |
おわりに | p.225 | 2分 |
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