従来型の広告ではこれから人を動かすことはできない。多くの人が動いた事例を紹介しながら、人が動くとはどういうことかを解説。これからのマーケティングのあり方が語られています。
■旧来型の広告はなぜ効かなくなったのか
国内の消費者がメディア接触に振り向けている時間の総量は、5時間強〜6時間のレベルでほぼ一定である。その合計時間において、パソコン・携帯電話を含めたインターネット接続に振り向けられる時間のシェアは、2008年24%から、2012年33%とこの5年で着実に拡大している。
また、今や「テレビ視聴」のスタイルもかつてと同じではない。なぜなら、ほとんどの家庭にはHDDレコーダーに代表される録画機器が普及しており、テレビ番組を録画して、好きな時間帯に観るという行為は当たり前の日常になっている。
つまり、消費者の立場に立っていえば「自分が見たいものだけ、見たり読んだりして楽しむ自由」が拡大している。広告メッセージの受け手である生活者サイドに編集権や編成権が移り、「広告枠」という異物を強制的にコンテンツに混ぜて見てもらおうとしても、消費者に有効にリーチできず、コミュニケーションが成立しない傾向が強まっている。
■人を動かす戦略
「できるだけたくさんの消費者に、たくさんのメディアを通じて、自社のメッセージをリーチさせればさせるほど、マーケティング・コミュニケーションは成功に近づくはずだ」というような、盲目的な「メディア横断×リーチ拡大志向」は誤りだ。
人を動かす戦略立案は5つのステップで行う。
STEP0:まず「目的」を必ず明確にする
いったい何人ぐらいを動かそうとしているのか。それは誰なのか。どんな人たちなのか。何人ぐらいの誰の「どんな行動」を期待しているのか。ここが明確になってから5つのステップを始めないと失敗する。
STEP1:「ターゲットインサイト」を洗いざらい出してみる
インサイトは「人間がとる、ある行動の理由になっている本音」。まず始めるべきは、このインサイトをどれだけたくさん出せるか、である。その具体的な方策としては「ターゲットにあたる複数人に直接インタビューする」という方法や、「ネット上やソーシャルメディア上にあるターゲットの生の声を収集する」方法などがある。
STEP2:「目的」と「インサイト」をお見合いさせる
明確にした目的を達成するために、もっとも使えそうなインサイトは何かという事を考える。その結果、人が動く「ココロの沸点」が発見できる。
STEP3:「ココロの沸点」を起こすために何を伝えるかを決定する
「ココロの沸点」を実現させるために、どんなメッセージやストーリーを伝えるべきかを考える。「期待する行動」を、最も起こせそうなポイントを先にフィックスさせておく事で、目的からブレないようにする。
STEP4:「ココロの沸点」体験となるコンテンツを用意する
メッセージやストーリーを具現化し、体験や体感につながるような「仕掛け」を用意する。
STEP5:「お金のかからない順に」伝える施策を決めていく
目的や動かす相手の規模感から考えて、お金のなるべくかからない方法から検討していく。広告は最後の検討手段である。
著者 本田哲也
1970年生まれ。ブルーカレント・ジャパン株式会社代表取締役。 戦略PRプランナー。セガの海外事業部を経て、1999年、世界最大規模のPR 会社フライシュマン・ヒラード日本法人に入社。同社バイスプレジデントを経て、2006年より現職。 国内外の大手メーカーなどを中心に、戦略PRの実績多数。 月刊PRIR主催「PRコンサルタントオブザイヤー2005」優秀賞を受賞。
著者 田端信太郎1975年生まれ。NHN Japan株式会社 執行役員 広告事業グループ長 NTTデータに入社し、BS/CSデジタル関連の放送・通信融合の事業開発、JV設立に携わったのち、リクルートへ。フリーマガジン「R25」の源流となるプロジェクトを立ち上げ、R25創刊後は広告営業の責任者を務める。 その後、2005年4月にライブドアに入社し、ライブドアニュースを統括。ライブドア事件後には執行役員 メディア事業部長に就任し経営再生をリード。さらに新規メディアとして、「BLOGOS」や「MarketHack」、「Techwave」などを立ち上げる。 2010年春からコンデナスト・デジタル社へ。カントリーマネージャーとして、以前から運営されていた「VOGUE」のウェブサイトに加え、「GQ JAPAN」「WIRED」のデジタルマガジンなどを新たに立ち上げながら、デジタル事業の成長と収益化を推進。 2012年6月 NHN Japan株式会社 執行役員 広告事業グループ長に就任。「LINE」、「NAVERまとめ」、「livedoor」などの広告マネタイズ全般を統括する。
週刊ダイヤモンド2014年9/6号 三省堂書店営業企画室課長 鈴木 昌之 |
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2014年 10月号 |
PRESIDENT WOMAN VOL.4 (プレジデント8.7号別冊) (プレジデント ウーマン) ソーシャルメディア研究所代表 熊坂 仁美 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
まえがきにかえて | p.2 | 2分 | |
PART1 「たくさんの人に見てもらえるほどよい」は本当か? | p.13 | 29分 | |
PART2 なぜ、人は「動く」のか?――1000人から10億人まで、スケールごとに考える | p.67 | 62分 | |
PART3 「人を動かす」ことをあきらめない | p.181 | 35分 | |
あとがき | p.246 | 3分 |