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2014/09/11更新

グローバリズムという病

155分

5P

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グローバリズムというお金儲けのための論理とは

経済成長期から成熟期を迎えたにもかかわらず、未だに発展途上を求めて、グローバルと唱える日本。グローバリズムという思想とは、そもそも何なのか。それがもたらず帰結とは何かが語られています。


■グローバリズムとはお金儲けの方便に過ぎない
グローバル化という言葉に込められた野望は、脱国家、超国家ともいうべきものであり、その主体は国民ではなく多国籍企業に他ならない。この国家と企業という2つの倫理体系、法体系、経済体系が今、世界中で激しく衝突している。

問題なのは、企業の「掟」と国民国家の「法」という二重の支配力が生じてしまうという事である。これはやがて国民国家を崩壊させる事になるかもしれない。

自由貿易や世界標準、共通言語といったグローバリズムを特徴付ける事柄の根拠を探っていけば、グローバリズムとは世界を豊かにし、人間を貧困や圧政から解放するための社会思想でも経済思想でもなく、ビジネス勝者が勝ち続けるための、露骨な、なりふり構わないお金儲けの方便に過ぎないという事がわかってくる。

超短要約

今世紀に入って、世界の先進工業国は国内総需要の減退に直面している。車も家電も一通り行き渡れば買い替え需要しかなくなるのは当然であり、その総和はそのままGDPの鈍化という結果につながる。この事は企業にとっては看過できない問題であり、消費のフロンティアを求めて、消費意欲の旺盛な発展途上国に販路を求めるのは当然の事だろう。

しかし、自国の産業を保護したい当事国では、様々な関税障壁や規制を設けて、外来の競争的な商品が一気に流入して国内の産業を根絶やしにする事から防衛しようとする。各国独自のローカルルールもまた産業の流入の障壁になる。これを打開するためにグローバル企業が主張するのが、関税や規制の撤廃であり、統一された産業基準であり、同一の決済システムであり、同一の言語である。いまや、グローバル企業にとって最も邪魔なものが国民国家である。

グローバリズムの思想的な根拠は、自由主義であり、個人や企業の活動の自由を守るためには国家の役割は最低限のものにすべきであり、産業の消長に関しては市場の原理が最優先されるべきだというものである。代わって個人も企業も、自己決定、自己責任でリスクを引き受けなければならない。会社は株主のものであり、その利益を最大化する事が株式会社の目的になる。

株式会社の発明は、世界が右肩上がりで成長し、投下した資本が、局所的な損得はあったとしても、総体としては増加して戻ってくるという社会状況を前提としている。株式会社は、その資本と経営の分離という原理において、右肩上がりの社会を前提とした発展途上モデルなのである。しかし、株式会社の発明から350年が経過し、先進国において右肩上がりで経済が膨張してゆく時代が終わろうとしている。

著者 平川克美

1950年生まれ。株式会社リナックスカフェ代表取締役 渋谷道玄坂に翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを内田樹らと共に設立、代表取締役となる。現在、株式会社リナックスカフェ代表取締役。株式会社ラジオカフェ代表取締役。立教大学特任教授。

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帯
神戸女学院大学名誉教授 内田 樹
週刊 東洋経済 2014年 9/6号「一流の仕事術/GPIF狂騒曲/社長の器・西久保愼一スカイマーク社長」 週刊 東洋経済 2014年 9/6号「一流の仕事術/GPIF狂騒曲/社長の器・西久保愼一スカイマーク社長」
エコノミスト 2014年 10/28号 [雑誌] エコノミスト 2014年 10/28号 [雑誌]
明治学院大学教授 中尾 茂夫

章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
第1章 「生態系」を破壊するグローバリズムという病 p.36 6分
第2章 日本人の独特なグローバル信仰 p.47 8分
第3章 「グローバル人材」論と英語力 p.61 6分
第4章 銃規制をできないアメリカと、グローバリズムの起源 p.71 8分
第5章 グローバリゼーションとグローバリズム p.84 5分
第6章 株式会社対国民国家 p.94 6分
第7章 租税回避で海外逃避する企業 p.104 6分
第8章 新自由主義の正体 p.114 6分
第9章 戦後体制の崩壊と、消えた国民経済 p.125 8分
第10章 国民国家の理念の背馳する特定秘密保護法 p.139 6分
第11章 グローバリズムとはお金儲けのための世界レベルの競争戦略 p.152 6分
第12章 家族制度の長い歴史と株式会社の驚くほど短い歴史 p.163 16分
第13章 失われた生活者の思想と、根拠地の思想を求めて p.191 9分

この本に影響を与えている書籍(参考文献、引用等から)

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