楽天でネットショップのオーナーを支援している著者が、大手ECサイトと差別化し、消耗戦から抜け出すECショップの戦略を紹介している本です。様々なユニークなECショップを事例に、なぜその店が流行っているのかを分析しています。
■自動販売機型にできない売り方を目指せ
近年、Eコマースのスタイルが大きく2つに分かれつつある。1つは「究極の自動販売機」の道で、もう1つは「究極の対面販売」の道。「究極の自動販売機」型は、低価格・送料無料・スピード配送・品揃え・ビッグデータを活用した高精度のリコメンドなど、便利さの価値を追求するスタイル。規模のメリットを強みとする、大企業に向く。
これに対して、「究極の対面販売」型は、接客コミュニケーション・店長の商品愛や専門性を活かした魅力的なコンテンツなど、楽しさの価値を追求するスタイル。オーナーシップがあり小回りの利く中小企業に向く。大企業によるEコマースが本格化する中で、中小企業が「自動販売機」型の道を進んでも勝ち目がなくなりつつあるのが昨今の流れ。したがって、消耗戦から抜け出すには、「究極の対面販売」の道を歩み、「自動販売機にはできない売り方」を考える必要がある。
「究極の対面販売」の道を歩むネットショップの取り組みは、もはや「ネット」だけにはとどまらず、リアル店舗やリアルイベントと連動したものも少なくない。
楽天市場の出店数は、今では4万店を超えている。いつの時代も店長さん達は「最近、競合増えたなぁ」と言う。努力が実って商品がランキングに入ると、それを見た同業者が「これが売れるんだな」と同じ商品や同種同等の商品の値段を下げてくる。また、新しいお店は、オープニングセールとして「赤字でもいいからお店を知ってもらおう」とプロモーションをかけてくるので、すぐ価格競争になってしまう。そうやって売るモノを真似され、1円でも安くされて価格勝負を挑まれという競争が果てしなく続く。そして、消耗戦を繰り広げているところへ強大な外国企業がやってきたり、大手メーカーが直販ECサイトをスタートしたりする。それが今のネットショップを取り巻く状況である。
楽天市場で店舗運営をやっていて、その消耗戦を抜け出し、楽しそうに商売をしているお店がある。価格競争をしなくてよいスタイルを編み出し、長続きしているお店がある。
①レモン部
苗木店「花ひろばオンライン」が始めた、みんなでレモンを育てる「部活型の商品」。レモン部には月に1回、レモンの苗木の写真を撮り、成長日記を書いて顧問に送るというルールがある。部員が成長日記を出すと、お店のページにアップしてくれる上、顧問がコメントをつけてくれる。多くの部員は、自分の成長日記のページやレモンの写真をSNSにもアップするので、それを見た友達との間で会話が生まれ、クチコミが広まっていく。
②邪悪なハンコ屋 しにものぐるい
しにものぐるいのハンコは「認印」という既存要素と「ゆるキャラのイラスト」という既存要素から成っている。それが新しい組み合わせだからこそ「なにこれ欲しい」と思われる。
③筑前飯塚宿 たまご処 卵の庄
「普段使い卵20個、40個、80個、160個」というラインアップが並ぶ。卵のとなりに「小分け用モールドパック8パック」なるものが売られており、お客さんはおすそ分けする。
④ふろしきや
「ふろしきや」は「シルエットクイズ」というクイズ形式のプレゼント企画を行っている。風呂敷で何かを包んだ写真をアップして、「何を包んでいるでしょうか?」というお題を出す。
著者 仲山進也
楽天株式会社 楽天大学学長 仲山考材株式会社 代表取締役 「次世代ECアイデアジャングル」主宰 大学卒業後、シャープを経て、1999年に社員約20名の楽天へ移籍。 楽天の初代ECコンサルタント9人の1人となる。2000年に「楽天大学」を設立、Eコマースのみならず、チームづくりや理念づくりまで幅広く、楽天市場出店者41,000社の成長パートナーとして活動中。 2007年に楽天で唯一のフェロー風正社員(兼業フリー・勤怠フリーの正社員)となり、 2008年には仲山考材株式会社を設立、Eコマースの実践コミュニティ「次世代ECアイデアジャングル」を主宰している。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊 東洋経済 2014年 8/30号「保険のウソホント/社長の器・片山幹雄シャープ元社長」 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 章 がんばればがんばるほど激しい消耗戦に巻き込まれる会社 | p.9 | 11分 | |
第1章 一発くんと老舗くん──消耗戦を抜け出すために 「やってはいけない5つのこと」 | p.29 | 38分 | |
第2章 消耗戦を抜け出せたお店の実践事例12選 | p.99 | 65分 | |
あとがき | p.218 | 3分 |
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