レジリエンスの3つの領域
将来にわたって成長し、世界のレジリエンスを高めるような企業を生み出す準備は整っている。今後、世界中の数十億という人々が、数世紀にわたって蓄積されてきた知識に簡単にアクセスできるようになっていくだろう。私達は、少人数のグループの中で、あるいは仮想空間における巨大な群衆の一員として、アイデアを交換したり、生産的に仕事を行う事ができる。
とは言え、未来のチャンスや問題に備えるのはたやすくない。世界を変えるトレンドが絡み合い、複雑な状況をつくり出している。多くの企業経営者は、次の10年間が極めて重要になると考えている。企業経営者の影響が及ぶ領域は、3つの円としてイメージする事ができる。
①社内のレジリエンスを高める
企業の中核となる社内のレジリエンスが失われると、企業で働く人々は目標を達成するための気力も能力も失って、イノベーションを起こす事ができなくなるだけでなく、地域社会に手を差し伸べたり、グローバルな問題に立ち向かったりする事もできなくなる。社内のレジリエンスという核を構築するのは、企業が持っている資産と能力である。特に重要なのは人的資産だ。
②社内と社外の垣根を取り払う
企業は自分勝手に活動できる存在ではなく、地域社会と深く関わっている事を自覚する事を求められている。
③グローバルな問題に立ち向かう
企業は世界全体から影響を受けている。世界規模の問題は複雑で、解決するためには多くの人々の協力が必要だ。
内なるレジリエンスを高める
企業は、イノベーションを起こせる人的資産をもって、社会のレジリエンスの源泉となる大きなチャンスを手にしている。人的資産は「知性と知恵」「精神的活力」「社会的つながり」という3つの形をとる。3つの資質は、絶えず補完し合っている。知性と知恵を増幅し、精神的活力を高め、社会的つながりを生かすために、企業が組織として大きな役割を果たす事も明らかになっている。
問題は、レジリエンスを高める鍵となる人材の育成が難しい事である。仕事は細切れ化してきて、かつてないほどバーチャルなものになりつつある。従業員同士のつながりは薄れ、仕事のペースが速くなっているため精神的に極めて大きな負担がのしかかっている。企業がそれぞれに対応するには、次の方法がある。
①知性と知恵を増幅する
・アイデアを掘り起こす
・オープンイノベーションを活用する
・実験をして認識を深める
・リスク負担を高く評価する
②精神的活力を高める
・働き方を変える
・仕事中に自由時間をつくる
・自然なリズムに合わせる
③社会的つながりを築く
・責務の透明性を高める
・サイバー空間で信頼を高めながら親睦を深める
・コミュニケーションを欠かさない
・思いやりの重要性を理解する