お客様の期待を超える商品を出す
高くておいしいのは当たり前。「安いし、こんなにおいしい!」と思ってもらえた時に、はじめて「値打ち」は生まれる。お客様の期待を超える商品を出す事で生まれる「驚き」こそが「値打ち」である。そして、「値打ち」のある事をやり続ける事が、長く商売を続ける秘訣だと考えた。
だから、原価率50%。外食産業で原価率50%というのは、個人店ならば十分にありうる水準である。一方、チェーン展開をするとなると、そうはいかない。多くの従業員を雇用しなければならないし、出店経費もかさむ。だから、外食チェーンでは原価率30%台が常識。これが、外食ビジネスの基本中の基本である。しかし、寿司は素材勝負の商売。原価をかけていいネタを仕入れなければ、お客様を驚かせる事はできない。だから、あえて「原価率50%」という非常識な道を選んだ。こうして徹底した「お客様視点」から超薄利多売のビジネスモデルに辿り着いた。
原価管理を徹底する
超薄利多売のビジネスモデルを成立させるためには、元々少ない利益をきちんと確保する必要がある。厳しかったのが「原価管理」である。例えば、寿司屋の看板商品であるトロを原価率80%で出す事は、お客様の「満足」や「驚き」に直結するからOKだが、その他のネタで調整して「トータル原価率50%」にしなければならない。しかも、単品ごとの原価率で50%を下回るものでも、コストパフォーマンスで競合を上回る事を求めた。つまり、競合と同じ値段であれば、必ずそれを上回る品質のネタを仕入れるという事である。
また、ロスやムダにもうるさかった。例えば、寿司の廃棄率。回転寿司は、予測ビジネスである。お客様が来店された時に寿司がレーンを流れていなければ、お客様に怒られてしまう。しかし、むやみに寿司を流すと廃棄率が高まり、少ない利益が吹っ飛んでしまう事もある。だから、どのネタを流せば手に取って頂けるかを正確に予測する事が、このビジネスの肝になる。そのため、どのようなお客様がどのような寿司を手にされるかをじっと観察した。
あらゆるロスをなくす
限られたスペースの中で、従業員が最も効率的に仕事ができるようにするためには、どこに配置したら良いのかを徹底的に追求した。従業員は1日に何度も同じ動作を繰り返すため、ちょっとしたロスが積み重なって大きなロスにつながる。つまりコスト削減につながる。「原価率50%」のビジネスモデルを生み出すために、あらゆる部分でロスを極限にまでなくそうとした。
店舗の立地についても極めて戦略的だった。「原価率50%」を守るためには、不動産賃貸料を低く抑えなければならないからである。だから、おのずと賃料の安い郊外に出店した。これらの戦略の根っこには、お客様が求めている事を、真面目に正しくやり続けるという哲学があった。