シニアの消費は変化で決まる
シニア市場を年齢によってセグメントするやり方には、注意が必要である。私達がモノやサービスを買うのは、何かの状態が変化した時であり、必ずしも年齢が変化した時ではない。
①加齢による肉体の変化
老眼、体力の衰え、更年期障害、肩や膝の痛みなどを実感すると、対処や予防のための消費が生まれる。
②本人のライフステージの変化
男性で一番大きいライフステージの変化の1つは退職である。退職して仕事を辞めると収入は減るが自由時間は大幅に増える。このため、この増えた自由時間を使うための商品・サービスに目が行くようになる。また、収入が減った分を補填するため、安全かつ有利な投資活動にも興味を持つようになる。
③家族のライフステージの変化
50歳代では、夫の仕事や両親の介護など不確定要素が多く、将来について確定しにくい。ところが60歳代になると、夫の退職や両親の世話などが一段落して、先の予定が見える事で消費行動が変化する。
④世代特有の嗜好性とその変化
食生活、音楽、映画、テレビ番組、ファッションなど、世代原体験は歳をとってからの消費行動に影響を与える。「ノスタルジー消費」(復刻版CDや映画のリメイク等)「時間解放型消費」(昔やっていた事にもう一度取り組む等)「愛用品消費」(昔ながらの商品等)などの形態で現れる。
⑤時代性(流行・生活環境)の変化
この変化には短期と長期のものがある。
・退職後も3日は仕事をする
・親世代と子世代は近くで暮らす
・介護・寝たきりは自分事
・高齢者のインターネット利用率の増加
ビジネスチャンスの見つけ方
シニアにとって消費の優先順位の高いものは、「不」の解消のための消費である。「不」とは「不安」「不満」「不便」であり、これらを解消させるものに有望市場の芽が潜んでいる。シニアの「不安」の内、「健康不安」「経済不安」「孤独不安」の「3K不安」が、どの調査でも上位に挙げられる。
これらの「不」が生じるのには、需要側と供給側それぞれに原因がある。需要側の原因は上記の「5つの変化」である。一方、供給側の原因は、需要側の変化に供給側が追いついていない事である。シニアが感じている潜在的な「不」からビジネス機会を見つける方法は以下の通り。
①飽和市場と言われている市場の周辺を見直す(例:カーブス)
②毎日行く所がない「不便」を解消する(例:コメダ珈琲店)
③買いたいものが1ヶ所にない「不便」を解消する(例:松坂屋上野店)
④身体の衰えによる「不便」を上品に解消する(例:ハズキルーペ)
⑤昔からあるが旧態依然として「不」が多い市場を狙う(例:補聴器)
⑥自分自身が「不」に感じている事を見直す(例:パソコン)