この先の世界はどのようになるのか。現在の技術やトレンドをふまえながら、人気エコノミストが、10年後の未来を予測しています。
■格差が拡大する世界
2001〜2013年の間に、先進国全体の経済規模は1.7倍に増えているが、同じ期間に新興国・途上国の経済規模は4.3倍に膨らんでいる。こうした大きな流れの中で、先進国では中間層の没落という現象が顕著になっている。比較的賃金の高い製造業を中心に、雇用が新興国に奪われている。一方で、一握りの富裕層がますます豊かになるという歪んだ構造が顕著になっている。
こうした格差の拡大は、資源高とそれに伴うインフレ、そして金融資本主義によってもたらされた。最も極端なのがアメリカで、上位10%の富裕層が国民所得の48%を占める半面、人口の1/3が貧困層もしくは貧困層予備軍に転落するという格差社会になっている。アメリカの貧困層は4650万人(約15%)に及ぶ。
先進国で中間層がこぼれ落ち、その富は一部の富裕層と新興国へ流れ出ている。こうして新興国では新たに富裕層が誕生する事になったが、新興国内でも格差が広がっている。世界全体で許容される中間層の数には限りがある。つまり、パイの大きさは決まっていて、それを先進国と新興国が奪い合っているのが21世紀の実情である。
歴史を振り返れば、デフレになるか、インフレになるかはエネルギー価格に大きく左右される。アメリカのシェール革命により、今後はエネルギーコストが低下する。毎月支払う電気代は確実に下がり、自動車は2025年頃には、ハイブリッド車に代わる究極のエコカーがそれに置き換わりはじめている。
エネルギーコストの低下とともに製造業も国内に帰ってきて、人々の職場も増えている。デフレが進むので、賃金は上がらないが、物価がどんどん安くなるので暮らしは今よりずっと楽になる。所得格差も縮小していく。
著者 中原 圭介
1970年生まれ。アセットベストパートナーズ エコノミスト 企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
エコノミスト 2014年 7/29号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 章 資本主義の終焉――成長神話の終わりは近い | p.1 | 8分 | |
第1章 これから物価は上がるのか下がるのか? | p.17 | 19分 | |
第2章 先進国の国民は豊かになる | p.57 | 11分 | |
第3章 日本で始まる水素社会 | p.79 | 14分 | |
第4章 日本の電気代は半分になる | p.109 | 9分 | |
第5章 日本で正社員が増える3つの理由 | p.127 | 11分 | |
第6章 未来の自動車はどうなるか | p.151 | 13分 | |
第7章 日本の産業はどこが勝ち残るか | p.179 | 10分 | |
第8章 負担は大きいが、意外に明るい少子高齢化社会 | p.199 | 16分 | |
終 章 2025年に生き残る人材の条件 | p.233 | 7分 |