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モノづくりの原点

さらに鎌倉シャツでは、フラシ芯という、天然素材で素地の風合いを活かせるものを使用している。芯地は表地に隠れ、客からは見えない。だからこそいいものを使うというのが、鎌倉シャツのモノづくりの原点にある。

縫製面においても、鎌倉シャツは品質第一を掲げ、より高い品質を目指している。鎌倉シャツには品質統一会議というのがあり、出席者は縫製工場をはじめ、鎌倉シャツの役員、スタッフである。縫製工場がそれぞれのノウハウを開示しつつ、縫製工場同士の横の連携を強化する事で品質統一と向上を目指す。

日本でのビジネスシャツの年間需要は4000万着。この内,メイドインジャパンは4%(160万着)。日本で国産を100万着売れば、シェアは63%にもなる。鎌倉シャツは既に60万着を見込み、100万着は目の前にある。

縫製工場直結で流通ルートを簡素化

鎌倉シャツの良品廉価のマーチャンダイジングが可能になった、最大の要因はリスクを自らに課す確固たる経営と取引姿勢にある。仕入れはすべて現金。返品も一切ない。支払いは仕入れの翌月に必ず果たす。

鎌倉シャツと縫製工場の良好な関係づくりは、他社とは一線を画する。各工場と同一目線に立ち、その上で企画、生産、供給までを一気通貫でつなげ、究極のSPA業態を構築しようとしている。主力縫製工場に対しては、月1万枚の発注を約束している。

低価格のさらなる要因は、流通ルートが縫製工場直結である事だ。さらに主力取引先は生地メーカーで2社、縫製工場は3〜4社に絞られていて、大量発注による、上質廉価MDの仕組みがつくられている。鎌倉シャツは流通ルートを簡素化し、とろ取引先を絞った究極のSPAを構築する事で、返品をなくし、高品質、低価格を実現させているのである。

良品を高回転率で販売

鎌倉シャツの原価率は59%と高い。アパレルメーカーの原価率は20%以下と言われる。鎌倉シャツがこの原価率でも経営可能なのは、高い商品回転率にある。回転率はメンズが0.8回転、レディスが1.2回転と高く、消化率は99%と、ほぼ全品を売り切ってしまう計算になる。しかもバーゲンセールは一切なしである。

高効率の要因は、まず短サイクルのMDにある。店頭の単品POSデータに基づき、企画、生産、管理を実施、商品投入計画を立てる。MDは週単位がベースで、アイテムごとに、いつ、何を、どの店に、何枚投入するかを決める。MDの基本は売る数と作る数がイコールである事としている。

国内生産能力を高めることが海外展開の鍵

鎌倉シャツの企業規模は、店舗数22店で年商は34億円。ネット販売を含めると40億円弱である。鎌倉シャツの眼は、いまや国内よりも世界に向けられている。課題はメイドインジャパンの製造体制をどう築いていくかにある。