高品質な綿100%の国産シャツを4900円で販売し、業績を拡大している鎌倉シャツの経営とものづくりについて紹介している1冊。原価率59%というアパレル業界では考えられない経営手法が解説されています。
■鎌倉シャツとは
鎌倉シャツのシャツは、税抜きで4900円。すべてが国産で、同業のプロの誰もが認める高品質のシャツを、4900円という廉価で売っている。価格は1993年の創業以来変えず、値下げやバーゲンセールは一切していない。
まず目に留まるのは、使用している生地である。主に綿100%の100番手素材を使用している。通常、シャツに使われている番手(糸の太さ)は、40番から120番手くらいまであり、番手数が上がるほど糸は細くなるから、生地は軽く柔らかになる。風合いや肌ざわりもよくなり、着心地は快適になる。
シャツのボタンは貝ボタンを使用している。天然の貝をくり抜いて作るため、1つ1つに表情があり、微妙な色合いの光沢を放つ。また貝ボタンは滑りにくく、留めやすいという特長を持つ。通常多くのシャツに使用されるプラスチックのボタン1個の価格は1〜2円。貝ボタンは20円だから、コストは20倍である。
鎌倉シャツは、創業以来、高品質のシャツ1枚4900円という廉価を可能にし、ニューヨークでの展開も実現させた。鎌倉シャツは、世界を視野に入れ、シャツで世界No1のSPAを目指している。
鎌倉シャツの品質は折り紙つきだ。しなやかで着心地のよい高級綿素材生地を使用し、丁寧な縫製による仕上がりは、市価12000〜15000円の商品に匹敵するクオリティを誇る。素材入手は、商社や問屋に任せず自ら中国奥地まで踏み込み、最適素材を確保する独自のルートを築いている。
同社の原価率は59%。一般アパレルの原価率は20%以下と言われるから、通常では考えられない数値である。このため粗利益率は41%と、SPAとしては極めて低率である。これをカバーするのが商品回転率と消化率だ。商品回転率はメンズが0.8回、レディスが1.2回であり、消化率は99%という高さである。
こうした数値と「日本のシャツを世界のシャツに」「日本のビジネスマンの服装を世界で通用するレベルに」という大志ある経営が、今日の鎌倉シャツを築いたといえる。
著者 丸木 伊参
1938年生まれ。OFFICE MARUKI代表 広告代理店でのコピーライターを経てヨーカ堂(現イトーヨーカ堂)に入社。販売促進部主任。 1970年商業界入社。『ファッション販売』創刊編集長、雑誌編集部門・書籍出版担当常務を経て、1996年代表取締役社長。 2001年OFFICE MARUKI設立、執筆・講演活動に携わる。
週刊ダイヤモンド2014年7月5日号 |
週刊ダイヤモンド2014年8/30号 紀伊國屋書店和書販売促進部係長 水上 紗央里 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.1 | 2分 | |
Ⅰ なぜ、このシャツを四九〇〇円で作れるのか | p.11 | 22分 | |
Ⅱ 一〇〇%リスクを取る | p.49 | 23分 | |
Ⅲ 会社と社員に嘘はない | p.89 | 21分 | |
Ⅳ 「言いたいことを言う」自由な風土 | p.125 | 21分 | |
Ⅴ ビジネスモデルを支える「高い志」 | p.161 | 21分 | |
Ⅵ 究極のSPAはいかに生まれたか | p.197 | 17分 | |
おわりに | p.234 | 1分 |
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