消費コンサルタントの著者が、行動経済学の研究をもとに、消費者の買い物をする時の錯覚行動を紹介しています。
■賢く買い物をするにはどうすればいいのか
買い物で肝心なのはワクワク感である。お金を費やしただけの「価値」を手に入れられなかったと感じたなら、買い物に「失敗した」事になる。
今から50年くらい前に「賢い消費者」という言い方がされるようになった。賢い消費者になれば、買い物=消費の行動で失敗する事はなくなりそうだ。
上手に賢く買い物をするには、そのための情報が揃っている事が前提になる。例えば、安全かどうか見極めるのにも情報は必要である。かつては、商品についての知識、情報量など、圧倒的に消費者の方が少なかった。ところが、ネットの普及した高度な情報社会では、情報自体は以前より容易に、より多くを得られるようになった。情報が少なすぎるという状況はなくなりつつある代わりに、情報が正しいかどうか、見極めなければならない新たな状況に直面している。
しかも、情報を集め、整理し、吟味して買い求めた商品が、いつでも満足できる訳ではなかった事にも気づかされる。コスパを追求したり、事前に情報収集したりする人が、過去10年増えてきて、その後に少し減少している。これは多くの情報に疲れてしまったからかもしれない。
「なぜ、その商品を買ったのですか?」という問いに答えるのは、いちいち理由を確かめながら買っていない私達には、本来、難しい事である。しかし、「なぜ?」の結果には、原因となる理由があるはずだと思い、その理由を私達は必ず探してしまう。
私達は商品を選ぶ時に、他の商品と比較検討して、その商品を選んだと思いがちである。しかし、お客さんの話では「いま」と「最近の買い物傾向」をごっちゃにしている事がよくある。実際の買い物ではワーキングメモリーの限度枠「7±2」の上限まで使われる事もほとんどない。普段よく買っている商品ジャンルでは、最初に目に入ったよく買う商品がその時の条件に合えば、そのまま買ってしまう。私達は、選択肢が多い事を好みながら、実際に選択肢が多ければ選ぶストレスを感じる。
著者 加藤直美
消費生活コンサルタント 経営コンサルタント会社を経て、1989年に流通業界のサポート会社「トレードワーク」を結成し、マーケットリサーチに基づくメーカーや小売業のマーケティング・サポートを行う。 1991年から消費生活コンサルタントとして活躍している。流通業界に精通する立場から流通専門誌などに多く執筆。
マインドマップ的読書感想文 smooth |
週刊 東洋経済 2014年 7/19号 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
まえがき | p.3 | 3分 | |
第一章 買い物を巡る物語のはじまり | p.15 | 21分 | |
第二章 数字は甘くささやく | p.59 | 35分 | |
第三章 「稀少=価値」「自然=純粋」の法則 | p.133 | 23分 | |
第四章 買い物行動はどう変わる | p.181 | 17分 | |
あとがき | p.216 | 3分 |
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