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2014/06/18更新

社会保障亡国論 (講談社現代新書)

  • 鈴木 亘
  • 発刊:2014年3月
  • 総ページ数:296P

237分

4P

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日本の社会保障制度の財政問題

財政という観点から見た場合、日本の社会保障制度が抱える問題は3点ある。

①規模の問題
2013年度の国の一般会計に占める「社会保障関係費」は29.1兆円となっており、一般会計全体の31.4%となっている。これは氷山の一角であり、保険料で賄われている分も含めて、社会保障給付にかかっている全費用は110.6兆円という規模に達している。これに医療や介護で国民が自己負担で支払っている分を足すと、GDPの1/4程度が社会保障費に使われている事になる。

②スピードの問題
社会保障給付費全体の伸びは、年間3〜4兆円という恐るべき増加ペースである。2013年度110.6兆円の社会保障給付費は、バブル崩壊直後の1991年度には50.1兆円に過ぎなかった。失われた20年と呼ばれる日本経済が成長していない期間に、社会保障給付費だけが2倍以上になった。今後も「団塊の世代」やその直後の世代が大量退職し、2030年頃までは同じようなペースで増え続けると予測されている。消費税5%増税によって年間13.5兆円の追加財源が確保されても、3〜4年に間しか効果はない。

③給付と負担の不均衡の問題
社会保障給付と負担の間には大きなギャップが生じており、ずっと広がり続けている。右肩上がりで伸び続ける社会保障給付費に対して、保険料収入は横ばいで頭打ちの状態にある。2013年度の社会保障財政赤字は48.4兆円に達する。これは今後、2025年度に148.9兆円、2050年度に257.1兆円、2075年度には340.9兆円と大膨張を続ける。現在、国民所得の3割程度である社会保障給付費は、2025年度には約4割、2050年度には6割を超え、2075年度には7割以上に達する。

社会保障の債務は1500兆円

日本の社会保障が深刻な財政問題を抱える事になった諸悪の根源は、世界最速の少子高齢化が進む状況下にあってなお、「賦課方式」を続けている事にある。賦課方式とは、高齢者世代が受け取っている年金、医療、介護、その他の福祉費用を、現役層が支える財政方式である。賦課方式を取れば、少子高齢化で高齢者の数が増え、現役層の数が減ると、たちまち大変な事態に陥るのは明らかである。

少子高齢化と賦課方式という最悪コンビは膨大な「暗黙の債務」を生み出している。2009年の厚労省の試算では、年金純債務は800兆円。ここに共済年金を加えると900兆円程度になる。さらに医療保険、介護保険の純債務を加えると、社会保障純債務は約1500兆円存在する事になる。現在の若者たちや将来世代は、自分が受益する社会保障給付よりもはるかに大きな負担を迫られる事になる。