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2014/06/18更新

社会保障亡国論 (講談社現代新書)

  • 鈴木 亘
  • 発刊:2014年3月
  • 総ページ数:296P

237分

4P

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社会保障の財政は危機的な状況にある

このままのペースで進めば、年金・医療・介護の財政は破綻する。現在の日本の社会保障制度の財政問題を紹介しながら、全く手つかずの社会保障制度改革の問題点を指摘する。


■消費税5%引き上げは焼け石に水
2014年4月から、消費税率は5%から8%に引き上げられ、2015年10月以降、さらに8%から10%への引き上げが行われる予定である。その目的は「社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指す」事とされている。しかし、以下の理由で、この10%への消費税率引き上げによってでは、社会保障の安定化や財政再建を果たす事はできない。

①3%分税収が増えても、増税による景気腰折れを防ぐための「経済対策」と称して、消費税率にして2%分を超える5.5兆円もの補正予算が汲まれ、非効率な公共事業等にバラまかれてしまう。

②消費税引き上げによる増収分を全て、社会保障費に使ったとしても、高齢化によって急増している社会保障費を満たす事はできない。現在、わが国の社会保障給付費は、GDPの約1/4に当たる110兆円を超える規模に達しており、年間3〜4兆円というペースで急増している。消費税率%引き上げで得られる税収増は13.5兆円と見込まれ、3〜4年で効果は消失する計算になる。

超短要約

現在の社会保障制度は、膨大な財政赤字を生み出しながら借金で運営されており、このままでは将来まで制度を維持する事は不可能である。たとえ、消費税の10%への引き上げが行われてもほぼ焼け石に水であり、より抜本的な負担引き上げ、給付抑制・効率化を実行する必要がある。

負担引き上げについては、消費税引き上げで今度の高齢化に対応する事は困難であり、望ましくない。それよりも、相続税の課税ベースを広げる等の高齢者の資産課税から財源を得る仕組みに、重点をシフトする必要がある。

一方で、現在、全くと言っていいほど手が付いていない給付の抑制・効率化策も、大胆に進めなければならない。給付と負担の両面の改革は早期に実行して黒字化し、高齢化のピークに備えて、今から積立金を作っておくべきである。将来は、この積立金を取り崩しながら財政運営を行えば、負担の急増を抑える事ができ、社会保障制度が生み出す巨大な世代間不公平を改善する事ができる。

著者 鈴木 亘

1970年生まれ。学習院大学経済学部経済学科 教授 大学卒業後、1994年日本銀行入行。1998年日本銀行退職。大阪大学大学院にて経済学博士号取得。大阪大学助手、大阪大学大学院助教授、東京学芸大学准教授等を経て、学習院大学経済学部教授。 現在、大阪市特別顧問(西成特区構想担当)等を兼任。 専門は社会保障学・医療経済学・福祉経済学。具体的には年金、医療介護、生活保護、ホームレス、少子化対策、保育などの問題を経済学の視点から研究している。 多くの日本人が抱える「社会保障制度」不安に対し、経済学を基軸に、現役世代特有の斬新な感覚で、新たな制度改革を提案する。

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BNPパリバ証券経済調査本部長 河野 龍太郎

章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
はじめに p.3 5分
第一章 財政から語る社会保障 p.17 18分
第二章 社会保障の暗黙の債務は一五〇〇兆円 p.45 15分
第三章 社会保障と税の一体改革、社会保障制度改革国民会議 p.69 20分
第四章 年金支給開始年齢は七〇歳以上に p.101 15分
第五章 高齢化社会の安定財源は消費税ではなく相続税 p.125 18分
第六章 公費投入縮減から進める給付効率化 p.153 15分
第七章 消費増税不要の待機児童対策 p.177 26分
第八章 「貧困の罠」を防ぐ生活保護改革 p.217 24分
第九章 改革のインフラ整備と仕組み作り p.255 17分
おわりに p.287 4分

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