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2014/06/19更新

アップルのデザイン戦略 カリスマなき後も「愛される理由」

84分

8P

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iWatchの未来

アップルの「高級化」への取り組みは、iWatchのような次のイノベーションを生む前の準備期間でもある。ウエアラブル端末には、アクセサリーのように「毎日身につけたい」と強烈に思わせるような美しさや高級感、身につける事を誇りに思えるような精巧な質の高さが欠かせないからだ。

アップルが出願する特許資料には、次代のアップル製品に関するデザインのヒントとなる情報が多く記載されている。今後のアップルのウエアラブル端末デザインを考える上で重要なポイントは次の3点である。

①ディスプレーの「枠」がない
液晶にしろ有機ELにしろ、一般的には技術的な制約から枠をなくす事は難しいとされている。そこでアップルが考えたのが、フレキシブルディスプレーを本体や基板の裏側にまで巻き付けてしまうこと。腕時計型端末では側面の部分にまで画面が回り込んでおり、電話やメッセージの着信をサイドが光る事で知らせるといった応用を考えている。

②シームレスなリング状の画面
バッテリーやアンテナ、自動巻き発電装置を収納する本体部分は、端末の片端にまとめられている。但し、腕に巻くと、その本体部は完全にディスプレーに隠れ、画面のみが腕に巻かれたような状態になる。

③待ち受け画面感覚で外装カスタム
アップルが実現しようとしているのは、目に見える部分すべてを画面にしたブレスレット型の端末だ。全部が画面という事は、待ち受け画面として自分の好きな柄や動画を常に表示させておけば、それがブレスレットの外観そのものになる事を意味する。アップルが、カスタマイズ需要までも自社のエコシステムの中に取り込み、ユーザーをさらに囲い込む。そんな未来は、すぐそこまで来ている。

iWatchは、iPodの代替機となるような比較的低価格のモデルから、高級時計を思わせるようなハイエンド製品まで使う素材にバリエーションを持たせながら複数の種類を発売すると予想されている。iWatchは、アップルが追求してきたデザインの集大成を飾ると言ってもいいような製品だ。アップルが過去のデザイン開発において、常に意識し続けてきたのが「時計メーカー」のデザインとブランドマネジメントだったからだ。

アップル復活のきっかけを作ったポリカーボネイト製のカラフルなiMacをデザインした時、同社のジョナサン・アイブ副社長はiMacのデザインやビジネス戦略について「スウォッチ」を例に出して解説する事を好んだ。時計を気軽なファッションアイテムとして捉え、多くの人が身につけて、楽しめるようにしたこのブランドをiMacと照らし合わせていた。

その後、アップルはアルミという素材を見出し、切削加工という技術で量産するという製造方法を発明した。そこでも、アップルが手本にしたのは時計メーカーのモノ作りの在り方だった。