正解のない時代
これまでは、海外から「新しいアイデア」や「商品」という形の「正解」を取り込み、それを改良、改善、量産して世界中で販売するというのが、多くの日本企業にとっての「正解」であり、「成功の方程式」だった。企業に入ってからも「成功の方程式」に沿って仕事に邁進すれば、すべてがうまくいった。子供の頃から頑張って勉強して多くの「正解」を身につければ、一流企業に入って一生安定した生活を送る事ができた。
ところが今、日本にはわかりやすい、追いかけるべき「正解」がなくなってしまった。「過去の正解」ではなく、自ら考え、自ら試す事が必要になった。人がどう生きるかは、あらかじめ定められた「正解」「今まで通りのルール」だけで導き出されるわけではない。
シリコンバレーの文化
個人が、個人の裁量をもって、自らの資質を十二分に活かす働き方を後押しする仕組みが、シリコンバレーには整っている。そこでは、世界中から集まった人々が、国籍や人種など関係なく、お互いをリスペクトし合う事で、ビジネスで結果を出そうとしている。
・社内政治や上司との人間関係よりも「その人は何かできる人か」が問われる
・新しいチャレンジが大歓迎され、「失敗したら、もうおしまい」なんて事もなく、「その失敗をどう次に活かすか」が重視される
・日本人の持つ「真面目さ」が大きな武器になる
・ストレスがなく「世界で一番自由な働き方」が実践されている
個人でつながる働き方
シリコンバレーの成功には「大学」の存在が大きく関与している。基本的には「起業すべし」という理念がある。日本においては、何のためにいい大学へ行くか、といえば、その後、大きな組織に所属するため、安定を求めるため、という事になる。日本ではいい大学に行って大きな企業や組織に入れなかった人は「ダメな人」になるが、シリコンバレーでは「ベンチャーになれなかった人がダメな人」という事になる。日本にもこういう「新しい働き方」を評価する流れが、生まれるはずである。
近年の通信やコンピュータ技術の進化は、働く環境をどんどん「自由度の高いもの」に変え続けている。そのような環境の中、シリコンバレーでは、人は「企業の力」「組織の力」よりも「個人の力」や「個人のネットワーク」に頼って仕事をするようになった。会社との関係がうまくいかなければ、他の会社に移動するか、独立して起業するという選択肢が当然のごとくある。もし選択に失敗しても、個人でつながった社会では、失敗はむしろ「よい経験」と見なされ、特に問題にならない。それは、誰もが「あらかじめ決められた正解」を追求していないからである。