プロの雀士として、20年間無敗という伝説を持つ著者が、人生において様々な転機を迎える40代の人へ向けた人生指南書。理不尽な環境で心を折らずに仕事をしていくにはどうすればいいのかといった、心の持ち方を紹介しています。
■相手に非情になるのではなく、己に厳しい者が最後に勝つ
非情にならなければ本当の勝負には勝てない、というのはあくまでも世間の勝負事に対するイメージに過ぎない。非情かそうでないかという事より、勝負に対して厳しくなれるかどうかが重要だ。勝負というものは本質的に厳しいもの。ゆえに、勝負に向かう人間に厳しさがなければ負けてしまう。
だが、勝てなくても「いい勝負だった」というものはいくらでもある。勝つか負けるかという結果だけではなく、経過も大事である。結果がすべてという勝利至上主義は、自分だけ勝ちさえすればいいという感覚に人を導きやすい。ビジネス社会でも、ある1社だけが突出した力をつければ、業界内で切磋琢磨し合ういい競争がなくなり、結果的には業界全体が落ち込む。
勝負は非情にならなければ勝てないという勝負観には、全体観が欠けている。結局、非情に徹して勝つ事を続けている人は、最後には大きな負けをくらうはずである。
■考える事よりも感じる事を大事にする
今の社会の成り立ち方は「考える」事に何よりも価値を置きすぎて、その事による弊害が無視できないほど大きくなっている。思考というものは、人に対して常に理性的な振る舞いをさせるように思われるが、それがその時々でいつも正しい答えを導く保証はない。むしろ、頭でっかちに考えられたものは、往々にして的を外したりするものだ。
思考に偏ると、人は感情というものに対して感度が鈍くなる。鈍くなれば人への理解や共感といったものが希薄になり、例外なく、その人は自己中心的な振る舞いをするようになっていく。
自然界の生物は、体全体から湧き出てくる感覚を使って自分が生きている世界を直観的にとらえている。人間も本来、そのような感覚を使って生きていたはずだ。それがあったからこそ、人はかつて自然と調和して生きる事ができたのだ。ところが、いつの頃からか、体よりも頭に価値を置くようになった人間はそうした感覚を失い、自然や周りの世界と調和して生きていく術をなくしてしまった。
昔の社会は、生身の人間同士の触れ合いが普通にあり、生活における様々な事柄が体を介してなされるという社会である。自然との接触も、今よりはもっとたくさんあった事だろう。人は頭よりも感じる感覚といったものを大事にしていたはずだ。
私達が「感じる力」を取り戻そうとするならば「触れる」事を意識して生活していくしかない。頭で考えられた言葉は、生の人間や世界に触れる事ができない。人に触れる。仕事に触れる。物事に触れる。頭で考える前に様々なものに積極的に触れていく事で、「感じる力」はまぎれもなく磨かれていく。
著者 桜井 章一
1943年生まれ。雀士 大学時代より麻雀を始める。昭和30年代から、裏プロの世界で勝負師としての才能を発揮。“代打ち"として20年間無敗の伝説を築き、“雀鬼"と呼ばれる。 その後、自身をモデルとした小説や映画などで、その名を広く知られるようになる。現役引退後は、麻雀を通じた人間形成を目的とする「雀鬼会」を主宰する。
帯 棋士 羽生 善治 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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まえがき | p.3 | 2分 | |
第1章 男は40を過ぎたらどう生きるべきか? | p.17 | 14分 | |
第2章 勝ち癖がある男の仕事術 | p.59 | 11分 | |
第3章 嫌な上司でも平気になれる | p.93 | 11分 | |
第4章 仕事のコツは「自然体」にある | p.125 | 15分 | |
第5章 40代からの感情整理術 | p.169 | 18分 |