勝ちパターン
最初の苦境は、義理の母からお金を借り、1ヶ月ほどで借りたお金を返し、また借りる事を繰り返して、乗り越える事ができた。会社が悪循環から抜け出し、利益があがるようになったきっかけは、エプロンだった。それまで、くまのアップリケのついたクッションカバーなどの小物をつくっていたが、それらは大して売れなかった。しかし、そういった小物を卸していたファンシーショップで、エプロンが売れているという話を耳にしたのだ。
当時、エプロンは通常5000円くらいで売られているものだった。ところが、もっと安いエプロンが売れているという。岩手の盛岡の問屋から1980円で売れるエプロンをつくれるなら大量に買うという話が持ちかけられた。この機会を逃さないために、10色分の生地を一気に発注するという大きな勝負に出た。チャンスがあるのに、フルスイングしなくてどうする。勝負をかけて材料を大量発注し、原価を下げてお客様が買いたくなるように売価を下げるという方法は、これからの勝ちパターンとなった。
現状維持思考では衰退する
エプロンの後もヒット商品が続き、ジェイアイエヌは一気に成長した。そこで有頂天になった。ポルシェを購入し、前橋の高級クラブに毎日通い、夜中まで飲んだ。そうして夜中まで飲んで昼に出社し、ろくに市場動向も追わないでいた間に、円高がどんどん進行していた。雑貨市場では、中国から安い輸入品がどんどん入ってきて、高価な日本製品は売れなくなっていた。気が付いたら、倉庫は在庫の山だった。
これではさすがにダメだと思い、社員と話し合い「中国でバッグをつくろう」という結論になった。結局、バッグは大当たりして、V字回復を達成した。もう飲み歩くような事はしなかった。同じ雑貨で成功できる時間は長くない。バッグが売れている内に次のチャレンジをしなくてはと思った。経営者が現状維持思考になると、現状さえも守れず、衰退していく。積極的な気持ちで攻め続けないと、成長しないし、安定もないのだ。
メガネとの出合い
中国製のバッグに続くヒット商品を探していた頃、友人に韓国旅行に誘われた。そこで見つけたのが「メガネ1本3000円。15分でお渡しします」という日本語のポスターだった。通常日本でメガネを買うと、1本最低3万円はする事を知った。この価格差はどこから来るのか。フレームメーカー、レンズメーカー、販売店など、多くの人が関わり、多額の中間マージンが発生しており、いつの間にか日本のメガネは3万円が最低価格帯になってしまっていたのだ。
これはチャンスだ。製品の企画開発、製造、販売までを一手に引き受ければ、価格を大幅に下げられる。ヒントになったのがユニクロの低価格フリースだった。ジェイアイエヌは新たなステップに進んだ。