ソーシャルメディアの普及により、クチコミの影響力が高まっている。クチコミはどのような仕組みで広がるのか。クチコミのキーパーソンにはどのような特徴があるのか。クチコミについての研究などをまとめた1冊。
■クチコミの影響力が増している
製品・サービスを知る、購入するきっかけとし、クチコミの存在感が増している。クチコミが受け手に対して大きな効果を与える事ができるのは、クチコミが自分の信頼する友人・知人から発せられたもの、つまり、情報が友人・知人の「共感フィルター」を通過した情報だからである。
ブログやSNSといったソーシャルな場の登場により、消費者が自らの消費経験を発信し、不特定多数の他者に影響を及ぼす事が可能になった。それによって対人影響の規模が飛躍的に拡大した。インターネットが登場する前の対人影響には、物理的・地理的制約が存在した。消費者が遠く離れた場所の別の消費者の意見を知る事や、一度に大量の意見を収集する事は困難だった。インターネットの登場は、この物理的・地理的障壁を取り払った。
こうした中で、他者より多くのカテゴリー知識やブランド知識を持ち、頻繁に発信し、多くのフォロワーを得ているキーパーソンを発見する事に注目が集まっている。
クチコミが広がっていくためには、雪玉(知覚認知率)と雪質(ネタ)が重要である。その根源には人と共有したい、共感したい、という消費者の気持ちがあるからである。
クチコミが成立するためには、クチコミの発信者と受信者の最低2人の行為者が必要である。発信者にとっては、尊敬や共感などの社会的なベネフィットが発信のインセンティブになる。そして、発信者がそうしたベネフィットを得るためには、受信者がそのクチコミ情報によって機能的・情緒的ベネフィットを得る必要がある。
いくらマーケターが金銭的なインセンティブを提供しようと、消費者は自分が所属する社会集団で受け入れられないような発信はしない。周囲の人間から感謝され、尊敬される、あるいは楽しい人だと思われるような情報を、消費者は発信したい。つまり、ブランドの好意的なクチコミを広めてもらうためには、マーケターは圧倒的な高便益、新規性、希少性、意外性、心を揺さぶる感動などの性質を持った情報をクチコミ発信者に提供する事が重要である。
著者 山本 晶
1973年生まれ。慶應義塾大学ビジネス・スクール准教授 外資系広告代理店勤務を経て、2001年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。2004年同大学院博士課程修了。 東京大学大学院助手、成蹊大学経済学部専任講師および准講師を経て、2014年より現職。専門はマーケティングで、主に対人影響の研究に従事。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2014年 06月号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 7分 | |
序 章 影響力のプラットフォームが変わる | p.25 | 13分 | |
第1章 影響力を及ぼす人々 | p.47 | 14分 | |
第2章 キーパーソンを動かして話題をつくる | p.73 | 14分 | |
第3章 キーパーソンを動かしてヒットをつくる | p.97 | 12分 | |
第4章 キーパーソンとコ・クリエーションを実践する | p.117 | 12分 | |
第5章 キーパーソンと消費者行動のメカニズム | p.141 | 16分 | |
第6章 影響力があるのは、似ているふたりか、似ていないふたりか | p.169 | 9分 | |
第7章 ソーシャルメディアを活用したマーケティングの課題 | p.185 | 13分 | |
あとがき | p.209 | 3分 |
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