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2014/05/14更新

私がくまモンの上司です――ゆるキャラを営業部長に抜擢した「皿を割れ」精神

182分

5P

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前例のない発想を提案する

九州新幹線は、新大阪駅ー鹿児島中央駅間を、最速3時間45分で結ぶ。この新幹線全線開業によって、九州は大きな発展が期待された。しかし、熊本県は新幹線の乗客に素通りされてしまうのではないかという強い危機感を抱いていた。何より、熊本県の人たちが新幹線の効果に期待していなかった事が、さらなる危機感を募らせた。県庁が主導で県産品を紹介したり、観光地をアピールしたりするだけでは県外の人は魅力を感じない。やはり、熊本全体の意識が1つにならなければならない。

そこで、新幹線元年の一環として、KANSAI戦略に取り組む事にした。くまもとサプライズPRキャラクターとして生まれたくまモンを関西に出張させ、熊本のPRに一肌脱いでもらう事にした。

初代くまモンは、細身で頭でっかちで、全体のバランスが良くなかった。2010年春にデビューしたが、近寄る子供たちは逃げていく有り様でお世辞にも可愛いとは言えなかった。くまモンはここから進化する。普通は、一通りイベントをこなせればそれでいいだろうと考えるのがお役所仕事。しかもこの時点では、まだくまモンはイベント限定のキャラクターである。しかし、熊本県庁の職員はここで諦めなかった。「こんなものだ」で済まさずに、「もっと何とかできるのではないか」と向上を求めたから、くまモンは進化した。これも「皿を割れ」の具現化である。

熊本県庁は、その政策の予算を使い、2010年にくまモンを本当の臨時職員として雇った。いわゆる「ご当地キャラ」を県庁のような自治体が職員として雇ってしまう。こういう前例のない発想を提案し、保守的な体質を変えていくのも、「皿を割れ」の思想である。

九州新幹線開業後の2011年度には、JRなどを利用して関西から熊本に訪れた観光客は約49万人も増え、前年比54%増となった。

迷ったらゴー

くまモンに関わる仕事には、主に「くまモングッズを作りたい」という全国各地からの申請の受付や、くまモンのイベント出演依頼の対応などがある。そういった、くまモンブランドの「交通整理」を一手に引き受けているのか、熊本県庁「くまもとブランド推進課」の担当者たちである。

彼らの素晴らしいところは飽くなきチャレンジ精神、そしてチームワークが見事なところである。名刺の1万枚配布も、架空の記者会見や吉本新喜劇の舞台出演も、ブランド推進課の皆でひねりだしたアイデアである。くまモンを営業部長にするというアイデアも彼らから生まれた。

くまモンの仕事は、それまでの慣例で決められていた事ではなく、自分の考えで何かを生み出さなければならない。「迷ったらゴー」。今までの県庁文化だったら判断に迷うようだったら諦めて、波風を立てない道を選んでいたが、行動すべきかしないべきかで迷ったら、行動する道を選ぶようになった。