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2014/05/01更新

『俺のイタリアン』を生んだ男 「異能の起業家」坂本孝の経営哲学

146分

2P

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イノベーションのDNA

ハーバード大学教授のクレイトン・クリステンセンによれば、イノベーションを生み出す人は、次の5つの力を持つと言う。

①マッチング思考力
一見無関係に見える疑問や問題、アイデアを結び付け、新しい方向性を見出す能力のこと。

②質問力
イノベーターは質問の達人で、物事の探究に情熱を燃やす。「今どうなのか?」という現状を把握して、「なぜ、こうなったのか?」という因果関係の理解に進み、「なぜなのか?」という対象の破壊に移り、「もし〜だったら」というゼロベースの思考につなげる。

③観察力
周囲の顧客、製品、サービス、競合企業などを常に注意深く観察して、洞察やアイデアを得る能力。

④ネットワーク力
多様な背景や考え方を持つ人達と幅広いネットワークを作り、時間と労力を使ってアイデアを見つけたり試したりすること。

⑤実験力
常に新しい経験に挑み、新しいアイデアを試すこと。

アイデアを発見する能力

『俺のシリーズ』を生んだ坂本孝の新しいアイデアを発見する能力は、これらの枠組みで説明できる。

①一見無関係なものをマッチングさせる
『俺のシリーズ』は「ミシュラン星付きレストラン」と「立ち飲み居酒屋」という一見全く無関係なものを合体させるところから生まれた。新ビジネスの構想を練るために、色々な店を食べ歩き「この過当競争で不況の時代でも流行っている店が2種類あることに気付いた。1つは「ミシュランの星を取る高級店」、もう1つは「美味しい料理を安い値段で出す立ち飲みの名店」であった。

②現状に異議を唱える質問をする
人が何らかの判断をするための情報を集める時は自分の思い込みに左右される事が多い。従って、偏見を排除して「なぜそうなるのか?」という本質的な問いを立て続ける事がイノベーションには必要である。

・料理人の育成になぜ10年もかかるのか? 
・週末の銀座は商売に向いていないのか?
・立ち飲み以外に方法はないのか?

③周囲を観察して洞察やアイデアを得る
坂本はビジネスの情報を得るために、「盛り場の散策」を有効活用する。定期的な散策場所は本屋やデパートの地下である。どんな本が売れているか、デパ地下では人が押し寄せている店を確認する。

④多様なネットワークから情報を得る
異分野の成功例に学ぶ企業は少なくない。食材を高くする分をスペースあたりの顧客数を増やすことで補う理論は飲食業界にとっては衝撃的かもしれないが、メーカーにとってはごく当たり前の戦略である。

⑤新しいアイデアを常に実験する
ブックオフや『俺のシリーズ』を始める事自体が壮大な実験である。坂本は実験を通して、自分の仮説が正しい事を証明してきた。