ITベンチャーやクリエイターが集まる過疎の町「徳島県神山町」。なぜ、なぜ観光スポットもない山間の町に人々が集まるのか。神山町に移り住んだ様々な人の話から、これからの日本の町と働き方を考えさせる1冊です。
■徳島県神山町
鮎喰川の畔に広がる人口6100人ほどの町、神山。徳島市内から40〜50分の距離だが、平地が少なく、急峻な斜面にへばりつくように集落が点在している。かつては林業で1時代を築いたが、木材価格の低迷と共に人口は減少の一途を辿る。高齢化率も46%と、少子化と高齢化に悩み苦しむ中山間の典型のような地域だ。
ところが、神山はITベンチャーの「移転ラッシュ」に沸いている。名刺管理サービスを提供しているSansanが2010年10月にサテライトオフィス「神山ラボ」を開設したのを皮切りに、9社のベンチャー企業が古民家を借りた。空き家として放置されていた古民家、それが続々とオフィスに姿を変えている。
オフィスだけでなく、移住者の増加に伴って、店舗や施設のオープンも相次いでいる。アーティストやクリエイターなどクリエイティブな人材の移住も加速しており、まさに新しく町が生まれ変わっている印象である。
日本の地方は人口流出と高齢化にあえいでいる。全体の人口減少と都市化の波を考えれば、その中の多くは限界集落と化していくだろう。それを押しとどめるものがあるとすれば、それは道路でも美術家でもなく、クリエイティブな人間の集積以外にない。人が集まる場をつくる。それこそが、生き残りの解である。
神山に住んだ人々が新しい生き方を提示している。会社と個人の関係を振り返れば、多くの人間が社員、あるいは従業員という立場にいた。企業という器に所属し、ある決められた範囲内で定年まで異動を繰り返す。そんな予測可能な生き方である。
だが、環境変化が激しくなるにつれて、従来のような予測可能な生き方は難しくなりつつある。その時代に求められるのは、思い切って前に踏み出す勇気と不確実を楽しむ開き直りだ。前に進めば新たに選択肢が現れる。
著者 篠原 匡
1975年生まれ。日経ビジネスクロスメディア編集長 日経ビジネスを舞台に活躍する記者兼編集者。 大学卒業後、日経BP社入社。日経ビジネス記者や日経ビジネスオンライン記者を経て、2012年から現職。
帯 日本総合研究所調査部主席研究員 藻谷 浩介 |
週刊 ダイヤモンド 2014年 4/12号 [雑誌] 丸善・ジュンク堂書店営業本部 宮野 源太郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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まえがき | p.6 | 5分 | |
Chapter1 新スポットが続々誕生!―発展する田舎、神山の「歩き方」 | p.31 | 22分 | |
Chapter2 それぞれの再始動―なぜ“生み出す人”はここに集まるのか? | p.73 | 48分 | |
Chapter3 創造を生む空気の正体―「神山」をつくり上げたグリーンバレーの奇跡と軌跡 | p.165 | 27分 | |
あとがき | p.218 | 3分 |