広告は社会のために何ができるか
「モノを売る」から「社会を良くする」コミュニケーションへのシフトとは、本来の「社会を良くする」という目的から離れ、「モノを売る」という機能だけが回り続けてしまっている広告を、もう一度「社会を良くする」コミュニケーションに設計し直す事である。あまりにも「モノを売る」視点に偏りすぎた広告コミュニケーションを、もう一度「社会をよくする」視点から考え直してみる、という事である。
広告は社会のために何ができるか。これからの広告会社には3つの方向性がある。
①企業を出発点にした時の広告のあり方
今や、インターネットで誰でも情報を手に入れる事ができる時代、本当にいい企業なのか、本当にいい商品なのか、調べれば誰でも分かる。だとしたら「いい企業ですよ、いい商品ですよ」とがむしゃらに表面的にアピールするよりも「本当にいいこと」を実際にした方が、結果的に本当にいい企業や商品だとみんなが感じるようになるのではないか。
そうして立ち上げから手伝ったのが、ネピアのトイレットロールやティッシュの売上の一部で、アジアで一番若い国である東ティモールのトイレづくりを支援する「nepia 千のトイレプロジェクト」である。これはCMではなく企業の活動である。CMではないこうしたプロジェクト型広告をつくるようになった。
CMが「面白ければ」、その企業も「面白い」と思ってもらえるのか。「いい企業だ、いい商品だ」と思って欲しければ「本当にいいこと」をするべきだ。まず「コト」を起こす、という発想である。企業が「伝える」事よりも、「行動する」事の方が信じられる。そして、信じられる企業や商品は、多くの人から選ばれるようになり、結果的には売れる事にもつながっていく。「企業から消費者に一方的なメッセージを発信する」のではなく、「企業と消費者がともに行動する」事こそが、これからのマーケティングにおいて大事な事である。
②NPO、個人、コミュニティを出発点にした時の広告のあり方
世の中で知られていない、でも本当は「伝える」でき社会課題がある。広告の「伝える」という技術は、企業以外のNPOや個人、コミュニティにとってのソリューションになりうる。NPOの活動内容として「啓発」や「教育」という言葉が入っていない事は、まずない。NPOにとって「伝える」という事は、彼らの活動プログラムの大きな部分を占めている。
③社会課題を出発点にした時の広告のあり方
社会の課題解決をマーケティングやクリエーティブの力で成し遂げていくキャンペーンを、NPOのお手伝いではなく、広告会社が主体となって、NPOや企業とも恊働しながら進めていく。売上目標だけでなく、社会をこれだけ良くするという数値目標も掲げる、新しい広告会社の姿である。