通る企画書の条件
情熱大陸の企画で見ているポイントは2つしかない。
①誰を取り上げるのか
情熱大陸は今年の50人を取り上げる番組。その条件をクリアした上で、いま世間が見たい人なのかどうか、あるいは世間はそれほど知らなくてもいま世間に見ておいて欲しい人のどちらかに該当するかである。
②撮影するテーマは何か
いろいろなシーンを取材させてもらえるのか、この人を取り上げるならこの切り口が面白い、というような取材論になる。その見通しが60%以上あれば、現時点で想像できるもの以上のものを撮って放送しようという事になる。
例えるなら、いま、客が食べたい、または客に食べてもらいたい食材を決めて、それが決まったら、一番おいしくなる料理の仕方を考えましょうということ。食材がいくらいいものでも料理の仕方が思い付かない食材は客に提供できない。
プレゼンの上手い下手はほとんど関係ない。情熱大陸の企画書にはフォーマットもない。結局、面白くなりそうな企画書は、共通してシンプルである。大事な事は、何がテーマなのか、1行で言えるかどうかである。
毒の効用
情熱大陸のプロデューサーに就任してから、過去の情熱大陸の放送を改めて見て、「いいな」と思わせる原因は何かを考えた。ある日、歴史あるバーの店員さんから匂いの話を聞いた。「すごくいい香水には、実はほんの少しだけ、臭いものが入っている。いい香りのものだけブレンドしてもいい香りにはならない」
番組も「いいな」と感じた回にはピリッとした要素が入っていた。番組にも毒というか、ピリリとしたスパイスが必要である。心掛けているのは、企画書でも何でも仕事において、いいところ9、毒1の法則。物事は少し格好の悪く見えるようなスパイスが入っている方が、より良く引き立って見えるのである。
自信はなくていい
情熱大陸の取材VTRを通して、一線級で活躍する人達を毎週、毎週見ていると、出演者のほとんどは自信満々の境地にはいない事がわかってきた。彼らは「ここで勝負するしかない!」「ここなら自分は勝てる!」と、自分の歩む道には信じるものはあったとしても、だからといって自信たっぷりで道を進んでいるわけでは決してなかった。
女優の米倉涼子さんが情熱大陸のインタビューにこう答えてくれた。「自信がないからこそ頑張れるというのは大事」 だからこそ、努力を積み重ねていける。
ヤンキースの黒田投手の好きな言葉は「苦しまずして栄光なし」 一流の人達は自信のなさを自覚しているからこそ、頑張れる。不安だからこそもっと求める力が湧いてくる。