『デフレの正体』の著者藻谷浩介氏が、商店街、限界集略、赤字鉄道、医療などをテーマに、その分野で活躍する7人と対談している1冊。
これからの日本をどのようにしていけば良いのか、ヒントが見つかるかもしれません。
■「商店街」は起業家精神を取り戻せるか
近代家族が崩壊しても人間にはやはり何か拠って立つものが必要で、だけど今時、多くの人は、家族や会社が続いていく事を期待できない。国では余りに大きすぎて実感が乏しい。そこで地域である。
ただ問題になるのは、20代以下の郊外に住む若い人達にとっては、ショッピングモールこそが地元だという意識になっている事である。ショッピングモールが商店街と同じように後世に残していくべき地域の拠点、皆の記憶の集積場所になりうるのか。ショッピングモールは消費する場としては愛すべき空間であっても、そこに使用人以上の者として係わり、自分が生きた証として後世に残していく場にはなりえない。
町とは「アントレナーシップが発揮できる空間である」という定義がある。要するに自分で事業を起こす精神性みたいなものである。私達はなぜ、商店街に感じる「町らしさ」を、ショッピングモールに感じないのか。そこに欠けているのが、アントレナーシップである。アントレナーシップを発揮して店舗を出した人達の事を零細事業者と言う。しかし今、それをやろうとする人は少ない。
表で騒いでいる人の陰に、無数のまともな「現智の人たち」が存在している。「列島強靭化」ならぬ「列島ハリボテ化」の狂騒の陰で、静かに次世代に残すにふさわしい「しなやかな日本列島」を形作る取り組みは続けられている。
著者 藻谷 浩介
1964年生まれ。日本総合研究所 調査部主席研究員 日本政策投資銀行 特任顧問 日本全国のほとんどの都市を旅行した経験を持ち、現地を歩いて回り、また沿革や郷土史を詳しく把握した上でその都市の抱える問題点を解析するという手法で、都市計画を提示している。 各都市をデータや数字だけではなく、沿革、郷土史を踏まえた上で分析するのが最大の特徴である。全国各地で数多くの講演会をこなしている。
エコノミスト 2014年 4/8号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.9 | 3分 | |
第1章 「商店街」は起業家精神を取り戻せるか―新雅史(社会学者) | p.13 | 19分 | |
第2章 「限界集落」と効率化の罠―山下祐介(社会学者) | p.43 | 19分 | |
第3章 「観光地」は脱・B級志向で強くなる―山田桂一郎(地域経営プランナー) | p.73 | 19分 | |
第4章 「農業」再生の鍵は技能にあり―神門善久(農業経済学者) | p.103 | 19分 | |
第5章 「医療」は激増する高齢者に対応できるか―村上智彦(医師) | p.133 | 19分 | |
第6章 「赤字鉄道」はなぜ廃止してはいけないか―宇都宮浄人(経済学者) | p.163 | 17分 | |
第7章 「ユーカリが丘」の奇跡―嶋田哲夫(不動産会社社長) | p.189 | 21分 | |
おわりに | p.221 | 2分 |
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商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書) [Amazonへ] |
限界集落の真実: 過疎の村は消えるか? (ちくま新書) [Amazonへ] |
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