ビジョンを可視化する
企業活動においてビジョンを具現化するには、調達・生産から販売、サービスまで、すべての工程における事業活動を見直す、新規事業を立ち上げる、または、新たなマーケティング活動を行うなど、様々なレベルでの取り組みが必要だ。
全社員の意識をビジョンの具現化に向け、行動につなげるには、生活者と共有可能なビジョンを構想するだけでなく、ビジュアルとして可視化する事が極めて有効である。ビジョンを可視化する事で、多様な認識を持つ人々の中に共通イメージを伝え、向かうべき方向性をブレなく共有する事が可能になる。
この新たな経営のありようを追究する上で「デザイン」という方法論が有効である。デザインは、経済的な視点だけでなく、人が必要とする生活の豊かさ・楽しさなどの価値観やライフスタイルであったり、社会においてその形が存在する上での自然環境、社会問題に対する関わりも考える。それらの最適解として、これまでに存在していなかった1つの形が生み出されるのである。
経営にデザインを活用する5つのメリット
①全人的な生活者から共感・支持を得られる
②自社を捉える視野が広がり、競合動向に囚われなくなる
③経営に、本当の意味でのリアリティが宿る
④まだ世にない、新しい企業活動が生まれる
⑤未来像実現に向けた活動を各社員が創発する
デザインを経営に活用する
経営にデザインを活用するプロセスは、2つの機能に沿って、未来像を構想する「ビジョン・プロトタイピング」と、ビジョン実現に必要な活動を検討する「アクション・プロトタイピング」のフェーズに分ける事が望ましい。重要なのは、ビジョンやアクションを検討する際、試作と検証を繰り返しながら完成形に近づけていく「プロトタイピング」という手法を用いる事である。プロトタイピングにより、少しづつ具体化しながら、精度を高めていく事が可能となる。
・ビジョン・プロトタイピング
現在の市場、現在の生活者の課題、現状の自社の経営を超えた、より良い未来を発想するための、あえて自社らしい最適解を経済・文化・社会の視点で検討する。この発想方法が思考にストレッチをもたらし、まだ世に無い独自性を創出する事を助けてくれる。
・アクション・プロトタイピング
ビジョン実現に向けた具体的手段を考える。まず、一度発想を膨らませて、考えられるアクションを洗い出す。時間、お金といった制約を除き、自由に発想を広げる。その後、組織の持つヒト・モノ・カネなどの有限な資源と時間軸を考慮し、実現性があり、かつ最も効果的なアクションを絞り込む。効果的なアクションについては、一度、具体的なイメージに表し、皆で共有しながら、精緻化を行う事がポイントである。