企業経営にとって大切なビジョンをどのように創造すればいいのか。
デザインの手法を使って、会社の未来像を描く方法を紹介している本です。
■企業を3つの視点で考える
これまでの企業経営では、消費者に便益を提供し、いかに収益を得るか、という事が焦点であった。しかし、今の時代は「消費者」と「収益」というシンプルな企業活動の枠組みでは捉えられない。「消費」を活性化するための企業活動が、その生産過程における自然資源の濫用や、利益の分配の偏りによる格差の拡大、労働者の酷使など、社会ひいては個々人の生活にマイナスの影響を与えている。そして、こうした企業活動の負の側面に対する生活者の目が厳しくなっている。生活者が企業を評価する際の視点は3つある。
①経済性:どの商品が望む機能を満たしていて安くてお得か
②文化性:新しいライフスタイルや生活行動を通じて生活を豊かにできるか
③社会性:社会に対して企業がどのような姿勢で向き合っているか
3つの視点で企業と社会、企業と生活者との関わりを規定する事は、その企業が未来に向けて「こうありたい」という姿、すなわち「ビジョン」を規定する事と同義である。自社が生活者と共に創っていきたい未来像であるがゆえに、そのビジョンを具現化しようとする企業活動への共感が高まる。
■ビジョンを創造し、事業活動に落とし込むための方法論
ビジョンを創造し、事業活動に落とし込むには、2つのプロセスを考える。
①ビジョン・プロトタイピング
中長期的に創り出す未来像を考える。
②アクション・プロトタイピング
そのビジョンを達成するための行動を考える
これらビジョンとアクションの検討においては「構想し、形にする」というデザインの思考方法を活用する。すなわち、検討内容を言葉だけにとどめず、可視化し、思考を形にしながら改善していく事が、まだ世に無い自社らしいビジョン・自社らしいアクションの検討に有効である。
■ビジョン・プロトタイピング
経済性・文化性・社会性という3つの視点から、その中心にある最適解を導出する。これは3つのステップで構成される。
①論点化
消費者ではなく生活者、全人的に暮らしを捉え、広い視野を持って生活者と共有できる自社との接点を模索する。
②言語化
経済性、文化性、社会性の3つの視点で自社の商品・サービスを棚卸しする。
③可視化
自社が創造する未来を言葉で表現するだけでなく、その未来像を、写真のコラージュやイラストなどを活用し、可視化する。ここでは「未来の記憶」というフレームワークを用いる事で比較的容易に可視化が進む。「未来の記憶」とは、自社が描く未来の一時点においてテレビ・新聞・ウェブなどで自社が報道された記事のイメージを作るワークである。
■アクション・プロトタイピング
ビジョン・プロトタイピングで検討した未来を実現するために必要な行動を設計する。これは3つのステップで構成される。
①シナリオ化
できるだけ多くの社員がアクション案を創出するには、現業から飛躍した発想を持つ必要がある。まず、未来の記憶で切り取った理想的な暮らしの1シーンを想像する事から始める。
②可視化
活動の中心となる事業、特にその事業で扱う商品やサービスを写真等を活用してコラージュする。
③体系化
活動案を俯瞰して、どの活動から取り組む事が自社の創る未来像に近づきやすいのかを判断する。
著者 博報堂コンサルティング
企業経営と顧客心理の深い洞察に基づいた、ブランド戦略の構築とマーケティングプロセスの革新を通じて、事業変革を実現するプロフェッショナル集団。
帯 良品計画社長 金井 政明 |
帯2 スマイルズ社長 遠山 正道 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 章 デザインと経営が結びつく時代 | p.1 | 10分 | |
第1章 製品・サービスを超える競争優位性 | p.15 | 13分 | |
第2章 3つの視点から見る先進企業の特徴 | p.33 | 17分 | |
第3章 経営はデザインそのものである | p.57 | 17分 | |
第4章 プロジェクト・ドキュメント1「UMEの智恵を暮らしに。」紀州梅効能研究会 | p.81 | 26分 | |
第5章 プロジェクト・ドキュメント2「美の歓びと暮らす。」深川製磁 | p.119 | 26分 | |
第6章 プロジェクト・ドキュメント3「やすらぎある世界都心。」東京都・港区 | p.157 | 26分 | |
第7章 デザインを経営に取り入れるための6つのステップ | p.195 | 26分 | |
対 談 無印良品のデザインは、質と美しさを持った普通を探り当てる作業 | p.233 | 14分 | |
対 談 デザインは、事業への想いを可視化し、具現化させる | p.253 | 10分 | |
おわりに | p.268 | 3分 |