失われた20年の中で、日本の製造業に悲観的な見方がされることも多い。しかし、失われた20年の中でも、日本のものづくりの現場は、生産性向上に努め、新興国に対しても競争力を持ち直し始めているという。
ものづくりの現場からの視点で、日本の産業について考えさせる本です。
日本で生き残っている貿易財現場は、ハンデが最大の逆境期であった過去20年に比べれば、今後は国際競争に生き残れる可能性はより高くなる。その理由は次の3つ。
①一時は絶望的に大きかった中国など主要な新興国との賃金差が縮小し始めた
②1990年代以後の逆境期にも能力構築を続けてきた日本の優良な貿易財現場は、その多くが新興国の工場に対して生産性の優位を保っている
③日本の優良現場の多くが、大幅な生産性向上の余地をまだ残しており、新興国工場のキャッチアップに抗して生産性の優位を維持できる可能性がある
但し、これには3つの但し書きが付く。
①生き残れるのは、今後も能力構築と生産性向上を続ける意思と能力のある「良い現場」に限られる
②比較優位の原則がある以上、全ての産業と現場で競争状況が好転するわけではない。例えばデジタル製品など調整節約的な製品では、今後も苦戦は続く
③現場の復調と企業の復調は必ずしも一致しない
著者 藤本 隆宏
1955年生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授兼ものづくり経営研究センター長 三菱総合研究所を経て、ハーバード大学ビジネススクール博士課程修了。 現在、東京大学大学院経済学研究科教授兼ものづくり経営研究センター長。 専攻は、技術管理論、生産管理論、経営管理論。
エコノミスト 2014年 3/18号 [雑誌] 一橋大学大学院教授 楠木 建 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 | p.3 | 3分 | |
第一講 「現場」は死なず―金融危機と優良現場 | p.13 | 33分 | |
第二講 本社よ覚醒せよ―自滅の道を回避できるか | p.75 | 34分 | |
第三講 ぶれない枠組を持つ―製造業悲観論を超えて | p.139 | 43分 |