どう生き延びるか
1段目のロケットは、小さな子供連れファミリーも長期にわたって集客に取り込める新ファミリーエリアを最速で建設し、2012年春までに開業させること。それによってパークの収益構造を大きく改善させてキャッシュを貯めつつ、2段目のロケットとして、日本全国・アジアからも集客が可能になる「The Wizarding World of Harry Potter」の2014年度内での開業を目指すこと。そのために、ほぼ全ての設備投資予算をこの2つに集中し、それ以外の 2011年度と2013年度は、低コストのアイデアで乗り切る、というプランだった。問題は、ハリー・ポッターがオープンするまでの3年間をどうやって生き延びるかだった。
金がなければアイデアを捻り出せ
当時のUSJには、原点の「映画だけ」にこだわったブランドに軌道修正すべきだと考える声が強かった。そんな空気の中で、USJのブランドを再定義した。「映画の専門店」から「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」へ。USJが年間集客400万人のテーマパークで良いならば、「映画だけ」にこだわるのもありである。しかし、そのレベルの集客では、巨大なテーマパークを維持運営できない。映画ではエンターテイメント需要の1割しかカバーできないのである。
USJは、非常に慎重にブランドを選ぶ。アニメならアニメ、ゲームならゲームで、その世界で最高のブランドかどうか。そして、USJならではの付加価値が乗せられるかが大切である。この2つのハードルを越えられるブランドは、「ONE PIECE」「モンスターハンター」などのブランドに限られた。2011年度はワンピースが大好きなファンを感動させるために、ハリウッドのスタンド技術や映画技術を駆使したショーに取り組んだ。
しかし、2011年は震災により大きく集客は落ち込んだ。それを取り戻すために、追加施策として4つを打ち出した。
・関西スマイル・キッズフリー・パス
・ハロウィーン・ホラー・ナイト
・モンスターハンターのイベント
・世界一の光のツリー
ターゲットを疑え
USJのブランド構築にあたって、壊さなければならない不必要なこだわりが「映画だけのパーク」の他にもう1つあった。それが「大人だけ」のテーマパークというターゲット設定である。USJは、テーマパーク業の最大のボリュームゾーンの1つである「低年齢の子供を持つ家族層」を開業以来、ずっと取りこぼしてきた。
ゲストの頭の中には「子供と一緒では楽しめない」というイメージがあり、これをどう解決するかだった。そこで思い付いたのが「大きな複合型ファミリーエリア」だった。ソフトには、エルモ、スヌーピー、ハローキティを活用した。