聖域を設けることのない経営
GEと言えば、前CEOのジャック・ウェルチが有名だが、現在CEOはジェフ・イメルト。45歳の若さで就任し、既に12年が経過している。GEは1892年から2012年までの120年間で、CEOはわずか9人しかいない。つまり、極めて長期的な視点に立つ経営を行っている。アメリカでは外部から経営者を招聘してくる事も少なくないが、GEでは120年の歴史の中で1度もない。すべて、内部からリーダーを選んでCEOにしている。
ジェフ・イメルトがまとめたGEのミッションステートメントには、こう記されている。「GEは革新性に富んだ、最新技術を駆使したインフラストラクチャーと金融サービスの会社であり、世界の困難な問題を、お客様と社会のために解決します。同時に、世界的にも優れた業績を達成します」
端的に言えば、この世界が直面する困難な課題を解決する企業でありたいという事である。それは、エネルギー問題、水の問題、医療・ヘルスケアの問題であったりする。
ジャック・ウェルチの時代、業界でNo1、2になるような事業しかやらないという戦略が話題になったが、GEは積極的に事業構造を見直し、事業を大胆に整理した。この姿勢はイメルト体制になってからも変わっていない。自ら変化をドライブし、事業を大きく見直していくのである。とりわけイメルトが言っているのは、自分達がきちんとコントロールできるものを事業として展開し、経営していくということ。自分達は技術的優位にあるのか。イノベーションを起こしていった時、そのリターンを取れるのか。冷静に見極めていく。
そして、GEでは長期にわたる将来性、収益をどこまでしっかり取っていけるのかをはっきりと見極める。ロングサイクルのビジネスを責任を持って進めていくには10年以上かかる。そこで、若いCEOを抜擢して、「長期政権」で運営する。長期政権なら、事業の見直しも長期的な視点で考えていく事ができる。そして、事業売却の意味は、単に資金を手にする事ではなく、次に投資するための原資を作り出していくということ。やりたい事が他にあるので、事業を入れ替えていく、というのがGEの事業売却の発想である。
世界が必要としているものを提供する企業でありたい。それがGEの考えであり、この点に関してはブレない。GEは特定の事業をやるための企業ではなく、事業はあくまでも手段に過ぎない。
GEが企業として120年も続いてきた間に、テクノロジーは何度も刷新されているし、世代も変わっていく。時代の荒波に耐え、長くサステナブルな企業を作れたのは、変化に対応してきたからである。
企業もダイナミックに変化していける事が、大きな強みである。これこそが、GE
を貫く1つの大きな柱になっている。