インターネットは社会を便利にした反面、生きる力を弱めている。戦後社会からインターネットが登場するまで、社会はどのように変わったかを示しながら、インターネット以後の社会をいかに生きるべきかを考えさせます。
■木を見て森を見ず
パソコンが普及し、情報化社会が本格的に始まった1980年代は、いろいろな意味で情報の扱い方が変わった時代だった。それまで学問の世界では、何を研究するのかを探し出す事が最初の関門であった。だから、1つのテーマを研究していって、その研究に行き詰まり、最初から戻って別の研究テーマにトライし、やがて、自分の納得できるテーマを見つけて成果をあげる。そうやって自分のテーマの周辺の無駄な研究を行う事によって、研究者には、幅広い教養が身についた。しかし、世界の知識や研究テーマがデータベース化される事によって、ある領域での世界的な課題というものが誰にも明確になった。そうなると、若い研究者は、無駄な研究をせずに、いきなり世界最先端のテーマに取り組む事になる。それまでの研究者のような裾野の広い知を得られる事はない。
インターネット以前の社会と以後の社会の根本的な違いは、情報というものが密室の中で秘密にされているのではなく、公開され共有されているところである。個人でも企業でも国家でも、アクセスする能力は平等である。大事なのは、検索能力やデータマイニング能力であり、その能力にはセンスと経験が必要である。
インターネットは、誰もが情報発信ができるようになった結果、ありとあらゆる個人の想いや知識があふれかえっている。まさに玉石混交の世界であり、その玉の価値は、人によって変わってくる。その情報の海から、豊饒な幸を回収するスキルと、それを判りやすく説明できるスキルが求められている。
著者 橘川幸夫
1950年生まれ。デジタルメディア研究所・所長 1972年、音楽雑誌「ロッキング・オン」を創刊。1978年、全面投稿雑誌「ポンプ」を創刊。その後、さまざまなメディアを開発する。現在、未来フェス代表、未来学会理事、阿佐ヶ谷アニメストリート商店街会長などを務める。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊 ダイヤモンド 2014年 3/15号 [雑誌] 丸善・ジュンク堂書店営業本部 宮野 源太郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
序章 森を見る力 | p.15 | 6分 | |
第一章 戦後社会の中で変質したものは何か | p.23 | 71分 | |
第二章 不安定な時代のアイデンティティ | p.123 | 11分 | |
第三章 メディアの現在 | p.139 | 47分 | |
第四章 インターネットが何をしたか | p.205 | 26分 | |
第五章 3・11以後の社会 | p.241 | 49分 | |
あとがき 追悼・林雄二郎さん | p.309 | 6分 |
坂の上の坂 [Amazonへ] |