自分のキャリアの捉え方と会社との付き合い方を考える1冊。20、30代の仕事感に関するインタビュー事例から、どのように仕事について考えるべきかをアドバイスしています。
■いったい仕事とは何なのか?
人はどんな姿勢で仕事に取り組むべきなのか? この疑問に対する有力な1つの意見が「自分にとって楽しい仕事をすべき」という考え方である。スティーブ・ジョブズのように「好きな事を仕事にせよ」と若い人にすすめる成功者は多い。しかし、これとは正反対の意見もある。「仕事とは我慢をする代わりにお金がもらえるもの」「人がやりたくない事をやるから、お金がもらえる」と主張する人も多い。仕事は必ず自分以外の「他者」がいて成り立つため、誰かの役に立つ事で、はじめて仕事が完成する。
「仕事は面白く、生きがいになり得るもの」という考え方に対して、その一方では「ノルマ」という言葉からイメージされるような「仕事はつらく、上から強制的に与えられるもの」という考え方もある。ところが、仕事で高いハードルがあっても、それを乗り越える時はまた嬉しいものである。これは仕事について考える上で、どちらも見落としてはならない2つの側面である。
働かなければ生存が難しいという状況では「働きがい」や「仕事自体の楽しみ」など考える余裕はない。危機感や緊張感というものが、働く上での第一歩として本質的に重要であるのは、基本的に今の時代でも変わらない。
その一方で「達成感」「進捗感」「周りからの承認」「自分の成長感」「自尊心」「将来の希望や期待・展望」というものが、個人の働き方に大きな影響を与える事も明らかになっている。つまり、人が行動を起こすには、危機感と同時にポジティブに自分を鼓舞してくれる感覚も必要である。危機感と将来のビジョン、緊張と希望、不安と夢、それらを同時に組み合わせて、自分のやる気に火をつける事が肝心である。
仕事に悩んでいる人は、次の3つの問いを自分に投げかけてみる事である。
①自分はいったい何が得意か
②自分はいったい何をやりたいのか
③どのような事をやっている自分なら、意味を感じ、周りの人、さらに社会に役立っていると仕事の価値を実感できるのか
他の人が自分をどう思っているのか、ではなくて、自分が自分をどのように捉えているか。これが仕事をしていく上で、非常に大切である。この3つの質問をした上で、もし会社の価値観と自分が合わないと思った時には、3つの選択肢を思い出す。
①組織を離脱する
②組織に「それは間違っている」と勇気を持って発言する
③無理やり自分の価値観と折り合いをつけて、忠誠心を持って居続ける
選択肢の内、一番無理があるのは、最後の「忠誠心」である事は間違いない。
著者 金井 壽宏
1954年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科 教授 モティベーション、リーダーシップ、キャリアなど、働く人の生涯にわたる発達や組織の中の人間行動の心理学的・社会学的側面に注目し研究している。 最近は、クリニカルアプローチで組織変革や組織開発の実践的研究にも着手している。
帯 サイバーエージェント 取締役 人事本部長 曽山 哲人 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに 「このままでいいのか」と迷いながら働く人へ | p.1 | 5分 | |
序 章 「働き方」に迷うとき | p.17 | 10分 | |
第1章 いったい仕事とは何なのか | p.35 | 19分 | |
第2章 働く20代がぶつかる問題 | p.69 | 23分 | |
第3章 仕事の面白さを見つける | p.109 | 17分 | |
第4章 「会社」としたたかに付き合う | p.139 | 16分 | |
第5章 自分のキャリアを考える | p.167 | 29分 | |
おわりに 働く人の生の声を聞き届ける | p.217 | 9分 |
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