ペイパルを起業し170億円を得て、ロケット会社スペースX、電気自動車会社テスラモーターズを立ち上げた起業家イーロン・マスクの物語。人類を火星に移住させるという壮大な計画はどのように進んでいるのか。
■南アフリカから来た男
イーロン・マスクは、宇宙ロケット、電気自動車、太陽光発電の3つの先端産業で革命を起こそうと挑んでいる異色の経営者である。イーロンは、1971年に南アフリカ共和国の裕福な家庭で生まれた。10歳の時にイーロンは小遣いを貯めて、パソコンを購入し、プログラムの教科書を手に入れ、独学でマスターしていった。12歳の時には、ソフトウェアゲームソフトを作り上げて500ドルで販売している。
17歳になるとイーロンは母親の親戚が住むカナダに1人で渡り、クイーンズ大学で学ぶ。そして、ペンシルバニア大学に奨学金を得て編集する。そこで熱中したのが物理学だった。1995年、イーロンはスタンフォード大学の大学院に入ると、まわりはインターネットブームに沸いていた。イーロンはスタンフォード大学を2日で辞めると、弟とオンラインコンテンツの出版ソフト制作会社「Zip2」を創業する。そして、このZip2をコンパック社にのちに3億ドルで売却し、これにより約2200万ドルを手に入れた。次に「Xドットコム」という会社を創業した。この会社は、インターネットの決済サービスを提供していた。
今のペースで人間が増え続け、地球温暖化が進んで自然環境が破壊されれば、人類は地球上だけには住めなくなる。だから、火星に移住する。しかし、いま火星に行けるロケットはないから、それを作るまでの時間を稼ぐため、電気自動車と太陽光発電を普及させ、二酸化炭素や排気ガスがこれ以上増えないように歯止めをする。
そこでテスラ社を作り、地味だった電気自動車をカッコよく作り上げ世間の注目を集め、全米に高速充電ステーションを設置して長距離ドライブを当たり前にする。充電ステーションの電気は、ソーラーシティ社が設置した太陽光発電パネルでセルフ供給を可能にする。スペースX社は宇宙ロケットをコモディティ化して量産し、その上、ロケットの再利用を実現してコストを1/100に下げ、火星に人類を送り込む。
イーロン・マスクがやっているのは、地球さえ超えた宇宙規模の壮大なスケールの事業であり未曾有のチャレンジだ。
著者 竹内 一正
1957年生まれ。ノースウェスタン大学 客員研究員 松下電器産業(現パナソニック)に入社。PC用磁気記録メディアの新製品開発、PC海外ビジネス開拓に従事。その後、アップルコンピュータ社にてマーケティングに携わる。 日本ゲートウェイを経て、メディアリングの代表取締役などを歴任。現在、コンサルタント事務所「オフィス・ケイ」代表。
日経トップリーダー |
THE 21 (ザ ニジュウイチ) 2014年 03月号 [雑誌] ディー・エヌ・エー代表取締役 守安 功 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.1 | 4分 | |
1章 降臨―南アフリカから来た男 | p.19 | 14分 | |
2章 難航―人生最悪の時 | p.45 | 18分 | |
3章 前進―未来を見る | p.77 | 13分 | |
4章 信念―宇宙への道 | p.101 | 11分 | |
5章 独創―PCの電池で車を走らせる | p.121 | 11分 | |
6章 異端―ロケット作りの革命 | p.141 | 18分 | |
7章 野望―人類を火星に送り込む | p.173 | 20分 | |
8章 運命―地球を救え | p.209 | 12分 | |
おわりに | p.231 | 2分 |