なぜ、日本ではゆるキャラが人気になるのか。キャラクター好きの日本人の心理を解き明かし、キャラクターの持つ影響力を解説しています。
■キャラクター大国 日本
バンダイキャラクター研究所の調査によると、好きなキャラクターがいるという人は、調査対象者の90.2%に達し、何らかのキャラクター商品を所有している人は、79%に及ぶという。現代の日本人は、大人でも抵抗なくキャラクター商品を買い、所有するようになった。性別や年齢を問わずに、幅広くキャラクターが受け入れられているという事は、日本文化の特徴である。
また、キャラクター・データバンクの推計によると、2012年のキャラクター商品の小売市場規模は1兆5340億円。ランキングでは1位が「アンパンマン」で4年連続トップ。2位は「ミッキーマウス」、3位は「ポケットモンスター」と定番キャラクターが並ぶ一方で、「おさわり探偵 なめこ栽培キット」などの新たなキャラクターも台頭している。
日本人のキャラクター好きのもう1つの面は、キノコの「おさわり探偵 なめこ栽培キット」「ドコモダケ」のように思いがけないものまでキャラクター化して、愛してしまう事である。
■キャラクター・パワー
日本人のキャラクター好きは、元来文化とでもいえるほど際立ったものだが、ここにきて「ゆるキャラ」ブームを中心に、キャラクター人気が一段と盛り上がっているのは、次の理由がある。
①東日本大震災以後、厳しい社会環境の中で、人々は感情的・精神的な絆を欲している。
②地方経済が苦境に陥り、知名度と魅力アップが必要とされている。現在、多くの企業が「顔」を作ることによって、感情的・精神的な絆を構築しようとしている。そこにうまく作用するのがキャラクターである。
③SNSやスマホの普及により、コミュニケーションのファスト化・コンビニ化が劇的に進んだ。
コミュニケーションの観点からキャラクター・パワーを分析すると、主要な7つが挙げられる。
①存在認知力:他者に存在を認められるプレゼンスを作る
②理解伝達力:メッセージや意味を理解してもらいやすくする
③感情力:好意や親しみやすさなど感情的な絆を作り、つなげる
④イメージ力:魅力的なイメージを創造する
⑤拡散力:人に伝えたくなるクチコミをおこさせる
⑥個性力:他のグループとの違いやある価値観を持った人々との同一性が認識できる
⑦人格力:まるで人間と同じ精神や魂があるかのような実在性を感じさせる
キャラクターには、経済、経営、会社という血の通わない無機的なシステムや組織を人間化する力がある。同じように、製品という無機物を人間化・人格化する力を持っている。例えば、「リラックマ」のマグカップやお皿を朝食時にみると、「あまり頑張り過ぎないで、まあまあそこそこでいいじゃない」「楽しくのんびり生きよう」という気持ちになる。この時、何でもない食器は特別な存在になり、「リラックマ」は好きな人は、生きる価値観、ライフスタイルの志向性によって「リラックマ族」になる。
著者 青木 貞茂
1956年生まれ。法政大学社会学部教授 大学卒業後、広告会社勤務のかたわら法政大学非常勤講師、早稲田大学大学院商学研究科客員助教授、東京大学大学院情報学環非常勤講師などを歴任。同志社大学社会学部教授を経て、現職。 専門は広告論、ブランド論。立教大学経済学部卒業後、広告会社勤務を経て同志社大学社会学部教授などを歴任。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊 東洋経済 2014年 3/1号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.1 | 6分 | |
第1章 キャラクターに依存する日本人 | p.21 | 23分 | |
第2章 キャラクターが持つ力 | p.61 | 17分 | |
第3章 「ゆるキャラ」の先祖たち | p.91 | 14分 | |
第4章 武器としてのキャラクター思考 | p.115 | 17分 | |
第5章 ブランドの価値とは何か? | p.145 | 18分 | |
第6章 企業のブランドをキャラクター化する | p.177 | 14分 | |
第7章 国家ブランドをキャラクター化する | p.201 | 11分 | |
おわりに | p.221 | 3分 |
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