毎日の平穏な生活こそ最も価値がある
マイルドヤンキーを簡単に説明すると「上京志向がなく、地元で強固な人間関係と生活基盤を構築し、地元から出たがらない若者たち」の事である。彼らが大事にしているのは、生まれ育った土地に根ざした同年代の友人たちと、そこで育まれてきた絆意識、家族と地域を基盤とした毎日の平穏な生活。それこそが、彼らにとって最も価値のあるものである。
マイルドヤンキーたちの消費の基底にあるのは、地元での生活や地縁をキープできるような消費ならば喜んでする、という強固な消費意識である。そして、同世代の一般的な若者たちよりも総じて消費意欲が旺盛で、優良な消費者である。
イオンは夢の国
マイルドヤンキーの多くは、郷土としての地元が好きなわけではない。地元の友達が好きだったり、地元友達と駅前のファミレスやカラオケに行く事や、休日はイオンなどの大型ショッピングモールで一緒に買い物するのが好きといった、中学生時代と地続きの「居心地の良い」生活をキープしたいだけである。
彼らは高校、大学、社会人と年を重ねても、いつものメンバー(いつメン)と、中学時代と同じ場所で、同じ消費をする。ライフスタイルや人間関係を変えるのは面倒くさく、現状維持に努め、楽である事を最上位概念とする考え方を持っている。
彼らにとって「地元」とはせいぜい家から5km四方の範囲。それより外は「外部」であり、あらゆる努力を払って、住み慣れた5km圏内で生活を完結させたいと思っている。インタビューする中で「イオンは夢の国」と表現する若者が本当にたくさんいる。地元族にとっての大型ショッピングモールとは、消費生活を支え、文化的拠り所たりうる、極めて重要な存在なのである。
マイルドヤンキーの志向
・収入の使い道は主に飲酒、タバコ、服や靴、ほか遊興費、車、バイク
・趣味は男性がパチンコ、パチスロ、車、女性は買い物やライブ、ゲームセンター
・好きなアーティストは、男女ともにEXILEが圧倒的に人気
・好むタバコの銘柄は、男性は比較的タールの強いタバコ、女性はメンソール系
・人気ブランドは男女ともにルイ・ヴィトン、グッチ、コーチ等の海外高級ブランド
・人気の車は大型ミニバン。彼らは地元友達が乗りやすいというおもてなし心から、スライドドアのホスピタリティを好む傾向がある
マイルドヤンキーたちに未知の事を調べようという意欲、知的好奇心のようなものはそれほどない。彼らにとって選択肢が多い事は苦痛でしかなく、だからこそ、数は少ないながらも密なつながりを持つ地元の友達同士で、深い絆を育む。「いつメン」以上に人間関係が広がらないのは、そのためである。「知らないものは、欲しがらない、欲しがれない」。それがマイルドヤンキーの本質と言える。