消費意欲は旺盛だが、地元から外に出ようとしない現代のヤンキーたちの消費傾向を調査した本。イオンを「夢の国」だと言う彼らの生活実態とはどのようなものなのか。
■マイルド化するヤンキー
かつていわゆる下流の若者に多くいたはずの典型的なヤンキーが、全国的に減っている。今のヤンキーたちは、気さくにインタビューに応じてくれるなど、全体的にいい人が多く、やさしくマイルドになってきている。犯罪に手を染める人も減っているし、社会や大人への反抗心をむき出しにする人も滅多にいない。
マイルドになった今のヤンキーは、大きく2つのタイプに分かれる。
①残存ヤンキー
昔のままの姿で今も残っているヤンキーで、現在では絶滅危惧種になっている人。但し、中身は昔と比べマイルドになっており、見た目もオシャレになっている。今のヤンキーの象徴はEXILEのようなファッションスタイルである。
②地元族
人間関係が狭く、中学校時代などの少人数の地元友達とつるむ若者。地元のファミレスや居酒屋や仲間の家でダラダラ過ごすのが大好き。地元とは、生まれ育った地域を指し、活動範囲は5km四方の地元である。
今のヤンキーは、見栄やメンツを周囲に示す事は少なく、基本的にはマイルドでやさしく、消費も小粒になっている。
マイルドヤンキーたちに未知の事を調べようという意欲、知的好奇心のようなものはそれほどない。彼らにとって選択肢が多い事は苦痛でしかなく、だからこそ、数は少ないながらも密なつながりを持つ地元の友達同士で、深い絆を育む。「いつメン」以上に人間関係が広がらないのは、そのためである。「知らないものは、欲しがらない、欲しがれない」。それがマイルドヤンキーの本質と言える。
彼らは、今まで抱いてきた既知の価値観を、ことさらエネルギーを消費して変える事もなく、極力手間をかけず、さりとて現在の生活水準を下げる事もなく、これからも生きていきたいと願っている。大切なのは、今と地続きの生活が明日以降も平穏無事に続いていく事である。
だから彼らが望む消費は、かつての若者がそうだったような「今の自分を変革し、高いステージに上がるための消費」ではなく、「現状維持を続けるための消費」である。この事を念頭に置けば、彼らのニーズを汲んだ商品やサービスの開発は成功するはずである。
著者 原田 曜平
1977年生まれ。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー 大学卒業後、博報堂入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、現職。多摩大学非常勤講師。 2003年JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。専門は若者研究で、日本およびアジア各国で若者へのマーケティングや若者向け商品開発を行っている。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊 東洋経済 2014年 3/8号 [雑誌] |
THE 21 (ザ ニジュウイチ) 2014年 05月号 [雑誌] 慶応大学大学院教授 岸 博幸 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 章 マイルド化するヤンキー | p.11 | 12分 | |
第1章 地元から絶対に離れたくない若者たち | p.35 | 16分 | |
第2章 マイルドヤンキーの成立 | p.67 | 14分 | |
第3章 ヤンキー135人徹底調査 | p.95 | 31分 | |
第4章 これからの消費の主役に何を売るのか | p.159 | 18分 | |
特別収録 東京都北区の残存ヤンキーに聞く | p.196 | 9分 | |
あとがき | p.215 | 3分 |
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