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2014/02/17更新

ハーバード戦略教室

242分

2P

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マスコの失敗

当時、アメリカの家具業界の市場規模は140億ドルにのぼったが、業界全体の利益率は低かった。運送にコストがかかる上、価格競争も激しかったからだ。業者数は2500を超え、大半は小規模で、多くは家族経営だった。家具業界は、効率が悪い事や、品数の多さ、顧客をいらいらさせる納期の長さといった難問を抱えていた。

マスコは参入し、大胆に前進していった。最終的に15億ドルで10社を買収し、米国第2位の家具メーカーになった。さらに2億5000万ドルを投じて、それらの製造設備を改善し、新たなマーケティング戦略を展開した。

しかし、マスコは、それまで32年間連続で増収を記録してきたが、家具業界に参入した2年後の純利益は30%も減少した。さらに2年後、同社の家具部門は14億ドルを売上げたが、営業利益はわずか8000万ドルに過ぎなかった。その後も長年にわたって悪戦苦闘を続け、ついにマスコは家具部門を売却する事にした。

戦う場所の選択が重要である

なぜ、マスコは家具業界でしくじったのか。答えの1つは、業種の利益率にある。業種による利益率の違いは、業界の競争環境を形作る、複数の経済的な「力」(供給業者、顧客、代替品、新規参入者など)によって生じる。これを「産業効果」と呼ぶ。これらの力は、個々の企業や経営者がコントロールできるものではない。だが、多くの経営者はスーパーマネージャー神話を信奉している。

家具製造業界は、企業間の競争が激しく、多くの企業が似た家具を作っている。家具は長持ちするので、客の力が強い。参入障壁は低く、代替品も豊富である。つまり、多くの点で「非魅力的」な業種である。

マスコは、高・中間・低の3つの価格帯の家具会社を買収し、幅広い製品を作れば経費が削減できると考えたが、家具の最上級品と下級品では、製造過程から流通、小売、顧客に至るまで大きく異なるため「範囲の経済」は通用しなかった。同様に生産規模を拡大するほど利益率が高まるという「規模の経済」も、工場や流通ルートが無数にある家具業界では追求しにくかった。

目標が違いをもたらす

では、マノージアンが失敗した業界で、イケアの創業者カンプラードはなぜ成功する事ができたのか。それは、彼が「決定的な独自性」を創出したからだ。イケアの価格はとても安いが、その安さを実現できたのは、コストに対する姿勢が他社とは根本的に違っていたからだ。さらにイケアは、一流のデザイナーを雇い入れ、家具の外見と質感を良くして、実際より高価に見えるようにした。

イケアの推進力となったのは「より快適な毎日を、より多くの人に」という目標だった。明瞭で牽引力のある目標によって、市場のニーズを満たし、独自のニッチを築き、客にとって重要な存在になっていった。マスコにはそんな目標がなかったのだ。