酒造り改革で、二度の経営危機を乗り越えてきた旭酒造。純米大吟醸市場でトップとなり、海外でも注目される『獺祭』はどのようにして生まれたのか。
■『獺祭』というお酒
旭酒造は、山口県の山奥にある酒蔵である。今では社名よりも『獺祭(だっさい)』という銘柄の方が知られている。この『獺祭』という酒は、テレビCMも流していないし、量販店やコンビニといった酒販業態ともほとんど付き合いがない。ただ、東京の料理屋さんあたりで飲まれた事のある方が増えて、「だっさい」と読んでもらえるようになった。
旭酒造で出しているお酒の銘柄は『獺祭』しかない。この「たった1つ」を「最高の1つ」に磨き上げる事で、着実に多くの方に届ける事ができるようになった。『獺祭』の出荷数量は1万1400石(1石=1升瓶100本)と、純米大吟醸という酒別で全国トップとなった2000年からは海外展開を始め、すでに約20ヵ国で販売している。
しかし、旭酒造は、初めから世界進出を見込んで、マーケティングや戦略を立ててきた訳ではない。山奥の小さな酒蔵での第一歩は、死ぬか生きるかという、どん底からの重苦しいものだった。
米を磨き込む精米歩合の比率の違いにかかわらず、旭酒造の酒はすべて『獺祭』という。
本当に美味しい酒を造るにはどうすればいいのか。考えた末に行き着いたのが、最高品質の酒米である山田錦を使った、最高品質の純米大吟醸しか造らない、今の体制である。70点を目指すのではなく、120点の酒造りにこだわっている。
著者 桜井 博志
1950年生まれ。旭酒造代表取締役社長 家業である旭酒造は、江戸時代の1770年創業。1973年に大学卒業後、西宮酒造(現日本盛)での修業を経て、1976年に旭酒造に入社するも、酒造りの方向性や経営をめぐって父と対立して退社。1979年に石材卸業の桜井商事を設立し、年商2億円まで育成したが、父の急逝を受けて1984年に家業に戻る。 研究を重ねて純米大吟醸「獺祭」を開発、業界でも珍しい四季醸造を導入したり遠心分離機を活用するなど、「うまい酒」づくりに向けた仕組化を進めてきている。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2014年 04月号 |
週刊 ダイヤモンド 2014年 3/29号 [雑誌] フライシュマン・ヒラード・ジャパン パートナー 徳岡 晃一郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章「負け組」の悲哀を忘れない | p.1 | 15分 | |
第2章 大失敗から学ぶ | p.29 | 14分 | |
第3章 捨てる勇気を持つ | p.55 | 11分 | |
第4章 「できること」と「やるべきこと」をはき違えない | p.75 | 13分 | |
第5章 常識や慣習にとらわれない | p.99 | 20分 | |
第6章 伝統が持つ奥深さを侮らない | p.137 | 12分 | |
第7章 発信しなければ伝わらない | p.159 | 17分 | |
第8章 打席に立ったからには、思い切りバットを振る | p.191 | 8分 | |
おわりに | p.207 | 1分 |