宮崎あおいはなぜうたったのか
最終的に、石川社長はテレビCMの放映を決めた。最大の理由は「社員のため」だった。もしテレビでCMを流せば、家族から「CM見たよ」と話題になる。こうして周囲から声をかけてもらう事は社員にとってモチベーションが上がるきっかけになる。
但し、テレビCMは毎日大量に放映されている。その中からCMを記憶してもらい、購買までつなげる事はハードルが高い。そこで、1つだけ注文を出した。それは「見た事のない、宮崎あおいさんにして欲しい」という事だった。テレビCMを通して「アースミュージック&エコロジー」に興味を持った人に対して、より詳しい情報を提供する仕組みも作る必要があった。そこで、検索サイトで「宮崎あおい」「うたう」などのキーワードで検索した時に「アースミュージック&エコロジー」のウェブサイトが見つかりやすくなるように工夫していった。ブランドのサイトを見た人に対しては、宮崎さんがCMで着ている洋服についての画面を出すなどした。20〜30代の女性の間で「アースミュージック&エコロジー」の認知度は、2013年に83%にまで上がっている。
小型化という出店戦略
SPAでは、ユニクロの大型店が目立つ。これに対して、クロスカンパニーはファッションビルやショッピングセンターに小型店を大量に出店してきた。ビジネスモデルとして見た時、出店戦略はスターバックスやコンビニに近い。こうした店は行列ができると、近隣にまた店を出す。同じようにクロスカンパニーではある一定の来店客数を超えると、近隣にドミナント的に出店していく。1店の売上目安は1億4000万円であり、これに基づいてビジネスを組み立てていく。
小型店モデルは在庫をあまり持たない店に大きな特徴がある。石川社長は「大型化した方が店舗の1人あたりの生産性は上がる。しかし、在庫の生産性で考えた場合には小型店舗の方が強みを発揮できる。シーズンごとに流行がある婦人服の場合には小型店が優位だ」と分析する。小型店ならば、店舗ごとに在庫量が少ないためリスクが小さい。内装にかけるコストを工夫して初期投資を抑えている。一方、在庫が少ない分、大規模点主体のSPAが在庫を70日ほどで回すのに対して、クロスカンパニーは30日ほどで回す。
そのための独自の工夫の1つが1商品にプロモーションを集中する戦略だ。テレビCMにインターネットを組み合わせるクロスメディア戦略の手法だけでなく、正社員を雇用し研修を繰り返す事で高めてきた接客の技術を組み合わせる。CMに登場する商品の情報は、店舗で販売を担当する社員に対してあらかじめ徹底的に伝えていく。店舗では、その商品についての接客ロールプレイングを繰り返す。CMに登場する商品は店内の目立つ場所に必ずディスプレーする事になっている。