ゲームの仕組みを利用して、人を動かす「ゲーミフィケーション」について、その概念から利用方法までを一から説明している本です。今後、ビジネスの世界でゲーミフィケーションはますます導入されていくと説く。
■ゲーミフィケーションが役立つ3つの理由
ゲーミフィケーションとは「非ゲーム的文脈でゲーム要素やゲームデザイン技術を用いること」と定義している。ゲーミフィケーションが役立つのは、次の3つの理由からである。
①関与
人々に何かをやってみようと思わせる仕組みをデザインする手段として、ゲーミフィケーションを捉える事ができる。私達の脳は、パズルを解きたい、フィードバックを得たいという気持ちやゲームがもたらす他の多くの経験を欲するようにできている。
②実験
効果的なゲームであれば、プレーヤーは絶えずもっと上達するために頑張ろうという気持ちになる。そして、時には奇抜なやり方を含めて、新しいやり方をあれこれ試しては、より良い解決策を見つけようとする。
③効果
ゲーム要素をビジネスプロセスに導入する事でかなり良好な結果が出ており、単なる変わった取り組みではない事を多数の企業が認めている。
ポイント、バッジ、リーダーボードは適切に用いれば、強力かつ実用的で、プロジェクトの重要な要素となり得る。一方で、ゲーミフィケーションとは、アイスクリームにキャラメルシロップを垂らすように、ビジネスプロセスにこうした要素を付け加えるだけのものではない。
ゲーミフィケーションでは、その仕組みの全体設計について熟考する必要がある。ユーザーの性質を理解して、自分がユーザーに何をして欲しいのか、どのように行動して欲しいのかを考え、それを実現するための最高の技術プラットフォームを検討し、具体的なゲーム要素を吟味して、ユーザーにその行動をとってもらうために活用するなど、検討すべき事は多岐にわたる。
ゲーミフィケーションの実装は、次の6つのステップをとると最もうまくいく。
①ビジネス目標を定義する
効果的なゲーミフィケーションには、ゴールを十分によく理解する事が極めて重要である。顧客維持やブランドロイヤルティの構築、従業員の生産性向上など、特定の目標を定義しなければ、失敗におわる。
②対象となる行動を詳しく説明する
対象とする行動は具体的かつ明確にしなければならない。例えば、自社のウェブサイト上でアカウントを開設する、コメントを書き込む、自社が経営するレストランに行くといった事である。ユーザーに求める行動は、間接的であれ、最終的なビジネス目標を促進するものでなくてはならない。
③プレーヤーを詳しく説明する
ユーザーは皆が皆、同じではない。ユーザーを複数のセグメントに分け、そのうちのいくつかに適した仕組みを用意するといったセグメンテーションは、ゲーミフィケーションでは重要である。
④アクティビティのサイクルを考案する
ゲーミフィケーションの仕組みにおいて行動をモデル化する最も有効な方法は、アクティビティのサイクルを作る事である。ユーザーの行動が他のアクティビティを引き起こし、それがさらに別のユーザーの行動を引き起こす。
⑤楽しさを忘れない
ゲーミフィケーションの仕組みを実装する前に最後にやっておくべきなのは、一歩離れたところから「これは楽しいか」と問う事である。ゲーム要素をまとめ、プレーヤー、目標、ルール、モチベーションといった複雑なものを考えていくうちに、楽しさという側面をつい見失ってしまう。自分が作った仕組みの魅力を絶えず見直し、楽しいかどうかを検討する必要がある。
⑥適切なルールを活用する
適切なメカニクスとコンポーネントを選び、システムにそのコードを書き込んでいく。
著者 ケビン・ワーバック
ペンシルベニア大学ウォートン・スクール法律学准教授 技術コンサルティング会社スーパーノヴァ・グループ創業者。ネットワーク時代の法律、ビジネス、公共政策に関する第一人者であり、オバマ大統領の政権移行チームのために連邦通信委員会(FCC)の審査を共同で統括、FCCと電気通信情報局へのブロードバンド問題の技術顧問を務めた。 クリントン政権ではFCCの新技術政策顧問として、アメリカ政府のインターネットと電子商取引の政策策定を支援した。テクノロジー関連の幅広いテーマについて、学術向けや一般向けの記事を多数執筆し、CNN、NPR、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポストなど、各メディアにも頻繁に登場する。
著者 ダン・ハンターニューヨーク・ロースクール法律学教授 ニューヨーク・ロースクール校情報法政策研究所ディレクター、ペンシルベニア大学ウォートン・スクール法律学非常勤準教授。 インターネット法、知的所有権、公共政策分野へのゲームの適用を専門とする。メルボルン大学やケンブリッジ大学法学部で教鞭をとったこともあり、ウォートン・スクールでは終身在職権を持つ。 バーチャル世界やテレビゲームの規制、ハイテク技術の知的所有権をはじめとして、コンピュータと法律が交差する分野について、カリフォルニア・ロー・レビュー、ジャーナル・オブ・リーガル・エデュケーションなどの学術誌に寄稿している。 MMOG(大規模多人数参加型オンラインゲーム)の社会的重要性に関する最初の研究者のひとりで、学究的なブログのテラ・ノヴァ(terranova.blogs.com)を共同で設立。
TOPPOINT |
週刊 ダイヤモンド 2014年 1/25号 [雑誌] 丸善・ジュンク堂書店営業本部 宮野 源太郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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なぜビジネスを楽しくできないのか? | p.19 | 8分 | |
Level. o1 ゲームを始めよう | p.35 | 18分 | |
Level. o2 ゲームシンキング | p.67 | 15分 | |
Level. o3 なぜゲームが有効なのか | p.95 | 18分 | |
Level. o4 ゲーミフィケーションのツールキット | p.127 | 14分 | |
Level. o5 ゲームをデザインする | p.153 | 18分 | |
Level. o6 エピック・フェイル(大失敗) | p.185 | 18分 | |
Endgame まとめ | p.217 | 7分 |
ゲームの要素をゲーム以外のものに使うこと。 課題の解決や顧客ロイヤリティの向上に、ゲームデザインの…
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