若者が親に依存せざるを得ない社会の帰結
弱者に転落する若者が増える中で、社会が若者に冷たく、親がやさしいという状況が続いたら、次の3つの事が起こる。
①親に依存している若者の中高年化
②親に依存できない若者のアンダークラス化
③階級社会の到来
様々な形で、弱者に転落する若者の世話や負担を親に押し付ける事が限界に来ている。そのため、若者にやさしい社会の構築をしていかねばならない。
生活レベルが親世代より低下する
今後確実に生じるのは、世代間の「下降移動」というべきものである。これは、子供が親と同じ年齢になった時、その社会経済的地位が、かつての親と比較して下降しているという事である。
90年代後半からの非正規化は、高卒就職層に大きな影響をもたらした。オートメーション化やIT化は、工場や事務、営業における熟練労働者を不要にした。マニュアル通りに働くだけでよい単純労働者が大量に必要とされ、高卒就職者を熟練労働者として育てる必要がなくなった。企業は彼らを非正規雇用で置き換え、中小企業には正社員であっても収入の上がらない者が増えた。高卒での安定した職は減少し、現実的に彼らの多くは不安定な雇用に就き、将来安定した職に就くという見通しは低い。
さらに「大学の高校化」が起こっている。大学を卒業しても、就職が厳しい時代になっている。現在は大学に入学したら「就活」以外の選択肢はない。とにかく就活をしなければ、卒業時点でまともな職に就ける可能性は低い。新卒一括採用の慣行の下では、希望する企業に正社員として入社できるのは、新卒の時期を除いてほとんどないのだ。新卒時に就職に失敗すると、安定した正社員に一生なれない可能性が高くなる。
いわゆる婚活も同じ構造である。今では、相手を探したり自分を磨くなど、積極的に活動をしなければ、結婚に辿り着く事は難しくなっている。しかし、婚活は結婚を保証する訳ではない。就職や結婚において無駄になるかもしれない努力を強いられるのが、今の若者の現状である。
社会保障のシステムを改革せよ
学卒後の若者は、正社員とそのルートから脱落する者に分かれていく。そして、一度、非正規雇用になった者は、そこから脱出する事が大変難しくなる。その状況が1990年代後半から続いたため、非正規雇用層が増える。しかし、日本では、不安定で低賃金の非正規雇用の未婚の若者の多くは、親と同居している。つまり、親によって、社会保障がなされている。その結果、結婚をためらう若者が増大し、少子化が起きるのだ。
日本の親による社会保障のシステムは「持続可能」ではない。20、30年後に親が亡くなった時に、不安定で低収入の元若者が社会の中に放り出されるのである。生活安定のためには、社会保障のシステムの組み替えが必要である。