若者の経済的立場が弱くなり、非正規化する中で、パラサイトシングルが増大している。こうした親に依存した社会保障システムはやがて崩壊すると警鐘を鳴らす。高齢者層に偏った国の政策を改めるべきだと説く。
■若者格差の出現
今、若者の間で格差が生じ、「弱い立場」の若者がたくさん出現している。彼らに対して、政府や社会はとても冷たい。雇用、社会保障に関しても、中高年には手厚く、若者には冷たい。一方、親はとてもやさしい。社会が冷たいから親がやさしくせざるを得ないのである。
戦後、高度成長期から1990年頃までは、男性であれば、学卒後、正社員として就職し、終身雇用と年功序列による昇進が期待でき、親に頼らずとも、若いうちに結婚して妻子を養う生活を営む事ができた。そして多くの女性も、そのような正社員と結婚する事ができ、家事や子育てに専念する生活に入る事ができた。
しかし、今や新卒で正社員として就職できない若者、就職したが離職する若者が増大し、24歳未満の働く若者の非正規雇用率は、男性42%、女性52%に達している。これは、若者の間に格差が生じているという事である。
経済の停滞によって、働く現役世代の生活レベルが大きく下がっている。そして、その被害に遭っているのは、非正規雇用率が高く、正社員でも給与が低い若い人々である。子育て世代に重なる若年層の生活レベルは、ここ20年の間に低下の一途を辿っている。一方、公的、私的年金給付を主な収入源としている高齢者層は、収入のレベルが下がらない。
この10年の日本経済の停滞、デフレで日本社会の再配分構造は大きく歪んだ。増大する高齢者の年金水準が維持される一方、現役世代の収入は下がり続ける。この歪みを少しでも正そうとするのが、子供手当であり、高等学校の無償化であり、消費増税でなかったのか。高齢者に偏った再配分構造を修正し、震災や財政赤字から生じる負担を現役世代だけでなく、高齢者世代にも「公平に」負担してもらうのがスジである。
著者 山田 昌弘
1957年生まれ。中央大学文学部教授 専門は家族社会学。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。
週刊 ダイヤモンド 2014年 1/4号 [雑誌] 紀伊國屋書店和書販売促進部係長 水上 紗央里 |
TOPPOINT |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
序章 若者に冷たい社会子どもにやさしい親 | p.9 | 11分 | |
第1章 若者を待ち受ける下降移動社会の恐怖 | p.27 | 31分 | |
第2章 「変容する家族」が新たな弱者を生む | p.79 | 26分 | |
第3章 ゆがんだ年金制度が「老後格差」を拡大させる | p.123 | 19分 | |
第4章 日本経済の停滞・凋落が止まらない | p.155 | 27分 | |
第5章 日本再浮上のために―家族社会学からの提言 | p.201 | 25分 | |
エピローグ | p.244 | 2分 |
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