最適な決断をするために必要なこととは何か。投資ファンドのリップル・ウッドで様々なM&A案件を手がけてきた著者が、決断の技術を書いています。
■決断の流儀
・相手の目線に立つ
ビジネスの要諦は「相手がどう考えるか」を的確にとらえ、優位に交渉を進めて取引を完成させ、チャリンとお金を頂く事である。自分がどう考えるかではなく、相手がどのように考えて何を求めているかを把握する事が、的確な決断の基本になる。
・上司に創造的な打ち返しを
「こういう事ができないだろうか」と、1つのアイデアについて意見を求めると、エリートと呼ばれているサラリーマンや官僚に限って、できない理由を7つも8つもロジカルに並べて返してくる。障害やリスクを把握する事は大事だが、そういったリスクを理解した上で「どうしたらそのアイデアを実現する事ができるのか」を知りたい。そんな時「こういう手もありますよ」というアドバイスをくれる部下の一言に砂漠で金を見つけたような気持ちになる。
■決断の流儀
・行き詰まったら変数を減らす事を考える
変数が多いほど、難易度が高くなる。経営において、プライベートにおいて、目の前の問題に出口が見えずもがいている人たちも、その多くは多数の変数が迷路のように絡み合い、にっちもさっちもいかなくなっているケースが多い。そういう時はすべてに目配りするのではなく、思い切って変数を減らす事を考える。行き詰まった時は、多くの変数の中から大きな問題ではなさそうなものを捨てる事である。
・柔軟な決断が大抵の問題を解決する
外交であれ、ビジネスであれ、様々な考えを持つ人が多数関係するので、物事の8割は自分の思い通りにならないと考えておくべきである。うまくいかない時にどう対応するかで明暗が分かれる。柔軟性を持てば、多くの人にとって今横たわっている問題は、たいてい解決するものである。1つのやり方として、セカンドベスト、サードベストで落着すれば上等と柔軟に割り切る事が解決につながる。
・長期楽観、短期悲観が決断の目安である
基本的に目先の事については、最悪の事態も想定しながら慎重に、考えられるいくつものリスクを瀬踏みしながら進んでいく事である。目を凝らしてすべての事象、人間を観察しながら一歩一歩前へと進む。一方で、細かく考えても仕方のない将来の事については楽観的に考えて悩まない。最適な決断を下すには、長期楽観、短期悲観というバランスで取り組む事を目安とすればいい。ゆったりとした巨視的な目とリスクを排除する慎重な対応のバランスが絶妙に保たれている事が大切である。
・敗北を喫した時に学べる
チャーチルの言葉に「成功とは、意欲を失わず、失敗に次ぐ失敗を繰り返す事である」という名言がある。つまり、失敗を恐れず、失敗から何かを学び、戦った相手が自分より何が優れていたかを謙虚に振り返る事ができれば、もうそれは成功の道程に入ったのも同然である。負け戦から競合の力量を認め、相手との力関係で自分に何が足らないかを冷静に把握する事が、次の適格な決断につながる。
著者 植田 兼司
1952年生まれ。いわかぜキャピタル株式会社 代表取締役CEO 大学卒業後、東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)に入社。以降25年間、国内外の資産運用業務に携わる。1987年には、同社における当時の最年少課長に抜擢される。その後、グローバル運用のヘッドとして約7,000億円のポートフォリオを運用。 1999年より米系投資ファンドのリップルウッド・ジャパンに移り、8年間に渡ってマネージング・ディレクター、代表取締役として数々のM&A案件を手掛ける。 2008年に、いわかぜキャピタルを設立し現在に至る。 東洋大学経済学部講師、法政大学大学院講師を歴任。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
帯 ライフネット生命社長 岩瀬 大輔 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 2分 | |
第1章 決断の流儀 | p.13 | 16分 | |
第2章 「逆張りの哲学」で勝ち切る | p.45 | 21分 | |
第3章 負けを克服し、逆転につなげる道 | p.85 | 17分 | |
第4章 感受性とストレス耐性を磨く | p.119 | 22分 | |
第5章 異質の人を大切に | p.161 | 17分 | |
第6章 変われるものだけが生き残る | p.195 | 22分 | |
おわりに | p.237 | 1分 |