世界の富を独占する0.1%のスーパーリッチはどのような人達か。超格差時代となった原因を考察し、その問題点を説いた1冊。
■広がる所得格差
紀元1〜1000年までの期間、西ヨーロッパのGDPの年平均成長率はマイナス0.01%。そして1000〜1820年までの成長率は西ヨーロッパで0.34%だった。その後、産業革命によって、1820年〜1998年までの期間、西ヨーロッパの成長率は2.13%にのぼった。産業革命は、プルトクラート(超富裕層)を生み出すと共に、彼らとそれ以外の人々との間に格差を作った。
こういう変化が特に甚だしかったのがアメリカである。アメリカでは1970年代、上位1%の年収は国民所得の10%だった。それが35年後には国民所得の1/3になった。テクノロジー革命、グローバル化、ワシントン合意(高所得者への課税率引き下げ)の拡大によって、プルトクラートは活躍の場を世界に広げて行った。
2005年、ビル・ゲイツの財産は465億ドル、ウォーレン・バフェットの財産は440億ドルだった。一方、アメリカ国民の内所得の低い40%、合計1億2000万人の財産は合わせて約950億ドルで、ゲイツとバフェット2人分の財産とほとんど変わらなかった。新興国でも、上位1%はその他の人々を引き離しつつある。所得格差は、中国でアメリカよりも大きく、インドやロシアでも急拡大している。
所得格差は、産業革命以前にはそれほど大きくなかった。全体の富と生産性がかなり小さく、エリートが手にする分は多くなかった。しかし、工業化が進むにつれて急速に拡大し、産業資本家と産業労働者が農民を大きく引き離した。やがて、完全に工業化した社会になって、所得格差は再び縮小した。教育が広い範囲に行き渡ると共に、富の再分配に、国がより大きい役割を担うようになったからだ。
ところが、1970年代後半に変化が訪れた。ミドルクラスの所得が停滞しはじめ、富裕層とそれ以外の人々との差が広がっていった。アメリカが「大圧縮時代」から「上位1%時代」に移行したのはごく最近の出来事なので、資本主義の作用について抱く我々の直観的なイメージは、いまだ現実に追いついていない。実は、所得格差の拡大は我々の予想を上回るほど急速に進んでいる。
例えば、2009年〜2010年、アメリカの国民所得は2.3%上昇した。しかし、アメリカ人の99%の所得はたった0.2%しか伸びていない。ところが、上位1%の所得は11.6%も増えている。新興国の急成長の裏でも同じような事が起きている。
1968年生まれ。ジャーナリスト ハーバード大学卒業後、ローズ奨学生としてオックスフォード大学セント・アントニーズ・カレッジに学び、修士号を取得。 フリージャーナリストとなり、「フィナンシャル・タイムズ」のモスクワ支局長やトムソン・ロイター、「グローブ・アンド・メール」のエディター、コラムニストを務める。
帯 コロンビア大学教授 ジョセフ・スティグリッツ |
帯2 元米国財務長官 ローレンス・サマーズ |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はしがき | p.7 | 8分 | |
1 これまでの歴史と、その重要性について | p.17 | 42分 | |
2 プルトクラート文化 | p.67 | 59分 | |
3 スーパースター | p.137 | 63分 | |
4 革命への対応 | p.212 | 55分 | |
5 レントシーキング | p.278 | 45分 | |
6 プルトクラートとそれ以外の人びと | p.332 | 54分 | |
結論 | p.397 | 12分 |
次なる経済大国 [Amazonへ] |
マルチスピード化する世界の中で――途上国の躍進とグローバル経済の大転換 [Amazonへ] |
伝説の再建人――倒産か再建か―瀕死の企業に挑むCEO のリーダーシップ [Amazonへ] |
マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) [Amazonへ] |
顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか [Amazonへ] |