個性あるメニューが必要である
「飲食店経営は生き抜くこと」である。生き抜くには武器が必要であり、飲食店にとってそれは「必殺技」のメニューである。その条件はいくつかあるが、まず「個性」である。その店にしかない特徴のある料理を指す。そこに、お皿に乗らない「隠し味」が加われば完璧である。
最近、お客様の店選びが激変している。以前は来店し、席に着いてからメニュー選びがスタートしていた。しかし、最近はネットの情報を見て、来店前に何を食べるか決めてから店選びをしている。他店と似たようなメニューでは、お客様の選択肢から一番に外されてしまう。
しかし、最初からオリジナルメニューだけに特化すると、安心して食べられるイタリアンやフレンチなどの定番料理を食べに来るお客様が離れてしまう。必ず「守るべき料理(伝統料理)」と「新しい料理」の二本立てを心掛ける。その割合は「伝統7:新料理3」が目安である。
味付けは、薄味ばかりでは口飽きするので、コースには焦げ味があるお皿、油分などカロリーに直接反応するお皿があり、塩味が効いていてうま味の豊富な味付けのお皿も加えて、コース内に起伏を入れる。一度食べて頂いたお客様がまた食べたくなるクセになる味を追求するなら、「苦味」と「酸味」と「辛味」という、自然界なら毒と言われる味が重要である。これらの味の流れに、お客様の向上心を満足させる「知識」が加われば、鬼に金棒である。オリジナルの調理法だったり、食材や歴史の話を添えて料理を提供したりする事で、お客様は知識欲も刺激される。
在来野菜こそが武器となる
「アル・ケッチャーノ」の看板には「地場イタリアン」と書いてある。この地場イタリアンという言葉には「適地適作で収穫された地元の素材を熟知した店」という意味が込められている。「アル・ケチャーノ」の味は、庄内地方の在来野菜に支えられている。この在来野菜こそ、地方のレストランの強力な武器になる。
そのため、おいしい食材を作る生産者には、収益を積極的に還元している。生産者の生活が安定すれば、さらにおいしい食材が作れるようになる。他の地域では食べられない食材を見つけ出し、レストランと生産者でお互いに育み合う。地域の「食」や「食習慣」を「食文化」にまで高めれば、遠方からお客様を呼べ、レストランの知名度も上がる。これが「地産地消」と「地産他消」、「地産訪消」へとつながり、地域全体が動き始める。